なぜダイバーシティ推進がうまくいかないのか?行動変容を生む組織づくりのポイント
なぜダイバーシティ推進がうまくいかないのか?行動変容を生む組織づくりのポイント

近年、ダイバーシティやインクルージョンという言葉をよく聞くようになりました。ダイバーシティ推進を目標に掲げる組織も増えてきています。
しかし、ダイバーシティ&インクルージョンと言っても具体的なイメージがつかめなかったり、それが達成されている状態とはどういうことなのかが分からず、具体的なアクションにつなげていくことが難しいと感じる声も聞こえています。
ではダイバーシティやインクルージョンは、組織とどのように繋がっているのでしょうか。一緒に学んでいきましょう。
ダイバーシティ&インクルージョンとは
それでは、「ダイバーシティ」および「インクルージョン」という言葉がどのような意味を持つのか確認していきましょう。
まず、「ダイバーシティ」は、多様性という意味です。人材の多様な在り方を指し示したり、そうした多様な人材を組織に受け入れることを目指す取組みや、人が本来持つ、それぞれの違いを受け入れる取組みを指すこともあります。そして、「インクルージョン」は、包括という意味です。組織内に受け入れた多様な人材を、十全に活躍してもらうために障壁を取り除いたりする取組みや、それぞれの違いをより活かすことを目指す取組みを指します。

この2つの言葉は、意味は似ていますが、多様な人材をダイバーシティで受入れて、インクルージョンで活かすという関係になっています。つまり「ダイバーシティ」とは「インクルージョン」の前提条件と言えます。そのため、近年ではこの2つを合わせて「ダイバーシティアンドインクルージョン」と呼ぶことが増えてきています。
これらの言葉には現代まで続く歴史的な背景があります。こうした背景を踏まえることで、なぜ「ダイバーシティ&インクルージョン」が重要なのかを理解する手掛かりにもなりますので、次に「ダイバーシティ&インクルージョン」が求められる/求められてきた背景について見ていきましょう。

ダイバーシティ&インクルージョンが求められる背景
1960年代、アメリカでは性別・人種・肌の色・宗教などの違いによる差別が問題視されていました。その対応として、公民権法が制定され、徐々にマイノリティの採用を促す運動がおき、ダイバーシティ&インクルージョンという考えが生まれました。これ以降ダイバーシティ&インクルージョンに対応した経営を行うことが、企業の社会的責任になっていきます。
つまり、当初はダイバーシティ&インクルージョンとは、性別・国籍・人種などの属性の多様性ものだったのですが、現在では、勤務・雇用形態の多様化からダイバーシティの対象が拡大し、「属性の多様性」だけでなく、それぞれのライフスタイルやキャリアなども踏まえた「働き方の多様性」を含めた概念として捉えられるようになりました。
では、ダイバーシティを推進することで、組織にはどんなメリットがあるのでしょうか。3つご紹介します。
1.働く環境の改善による組織の活性化
ダイバーシティ推進による、働く環境の改善は、組織を活性化させ、2つの効果が期待できます。1つ目の効果は、より優秀な人材が集まることです。多様な人材の活躍を後押しし、不足する労働力を補うことで、企業が抱える「労働人口の減少」と「雇用の流動化」の課題に対応できます。それに加えて、高い独創性や特殊な経歴を持つ人材が集まりやすい点も重要です。
2つ目の効果は企業に対するロイヤリティが高まることです。企業が従業員の多様性を認めることは、一人ひとりを大切にする姿勢と捉えることができ、企業に対するロイヤリティが向上します。またこれによって、退職者が減少したり、労働意欲が向上したりという効果が期待できます。

2.マーケットニーズの多様化への対応
ここでは3つ例をご紹介します。
まずグローバル市場への切替えについてです。国内市場の成熟から、グローバル市場への切替えを目指す日本企業が多くなってきました。市場の切替には、異文化出身者などの多様な視点が必須と言えるため、ダイバーシティ&インクルージョンによる環境の整備が必須となります。
次に多様な価値観への対応についてです。商品・サービス開発において、価値観が多様化する社会では、顧客ニーズも多様性を重視する傾向があります。それに対応するために企業側にも多様な視点を持つ人材が求められています。
最後に企業の創造性と革新性についてです。ダイバーシティ推進を行うことで、多様な人材が集まり、創造性と革新性が阻害されず、各自が能力を発揮しやすい環境を作ることができれば、これまでにない画期的なアイデアが生まれる可能性が高くなります。

3.変化への対応力の向上
ダイバーシティ&インクルージョンが推進されていない、多様性のない組織では価値観が一面的になりやすく、社会変化に気づきにくいという特徴があります。結果的に、社会変化への対応が遅れてしまうことが懸念されます。
一方、多様性のある組織は、価値観が多様なため、社会変化を敏感に察知することができ、結果的に変化に素早く対応できます。社会変化の激しい現代では、素早い対応力が求められており、この点からもダイバーシティ推進にはメリットがあるといえるでしょう。

推進に欠かせない多様な人材
では、実際にダイバーシティ&インクルージョンの取り組みにおいて考慮されるべき人材とはどのような人のことを指すのでしょうか。本コラムでは性的少数者、障害者、高齢者、異文化出身者についてご紹介します。
まずは性的少数者、セクシュアル・マイノリティーについて説明します。性的少数者とは、多様な性の在り方を持つ人々のことです。頭文字をとってLGBTという略称で呼ばれるレズビアン(Lesbian)、ゲイ(Gay)、バイセクシュアル(Bisexual)、トランスジェンダー(Trancegender)が代表的な例としてあげられます。
またこれに加えて、クエスショニング(Questioning)やエックスジェンダー(X-gender)など、多様な性のあり方が認められており、これらの在り方を総称して性的少数者やセクシュアル・マイノリティと呼びます。日本国内で13人に1人がLGBTの当事者であるという統計もあり、日頃から男性・女性以外の性のあり方への認識を日常的に持つことが重要です。

ダイバーシティ推進の観点からの重要なポイントは、アウティングに注意することです。アウティングとは、本人の許可なくカミングアウトすることです。
例えば、「あの人、LGBTだよ」と本人の許可なく、カミングアウトしてしまうなどのケースが挙げられます。カミングアウトは当人を深く傷つけてしまう可能性が高く、しないように注意を払う必要があります。カミングアウトは、当事者がしたいと思った相手に、自分のタイミングですることです。例え良かれと思っての行動であっても、勝手に共有することはアウティングになります。

次に障害者についてみていきましょう。障がいと一言で言っても、その種類は様々で、主に身体障害、知的障害、精神障害、発達障害、高次脳機能障害の5つに分かれます。

ダイバーシティ推進の観点から、考慮すべきポイントは大きく2つです。
1つ目に、違いを特徴として受け止めること。人にはそれぞれ、「出来ること」と「出来ないこと」があります。それは各人の「特徴」であり、障がいの有無は関係ありません。必要以上の特別扱いは、むしろ当人を働きづらくしてしまう可能性があります。
2つ目は合理的な配慮を行うことです。当事者の障がいの種類や状態、また性別や年齢などを考慮した対応をとることが大切です。問題が生じた場合には、話し合いをして解を見つけましょう。

次は高齢者についてです。現代の日本では、労働人口が不足しており、働きたい高齢者が増加傾向にあります。高齢者と共に働く際に気をつけたいポイントは、過度に一般化した発言は控えることです。「あの人は高齢者だから考え方が古い」というような、高齢者を過度に一般化した発言は控えましょう。それぞれ育ってきた時代背景や受けてきた教育が違うことを理解し、一人ひとりの価値観や個性を認識することが重要です。

最後に異文化出身者についてみていきましょう。異文化出身者とは、外国人や帰国子女など、出身文化・母国言語が異なる人たちのことです。企業の海外進出や海外からの労働人口の流入などにより、職場はもちろん取引先などでも、日常的に関わる機会が増えています。
ダイバーシティ推進の観点から、考慮すべきポイントは、「常識」の違いやタブーの存在を理解することです。例えば宗教の違いや人権問題の中に、タブーが存在することを理解したうえで、関係を築くことが求められます。

アンコンシャス・バイアスに気づく
自分にとって新しいものや異なるものに実際に出会うと、そのまま受入れることが難しかったり、自分とは違う考えに出会うと、理解できないもどかしい気持ちをもったりすることもあると思います。場合によっては、それらが働きづらさに発展することもあります。
ここでは、新しい・異なる人やもの、価値観と、自分の価値観が衝突する原因の1つである、アンコンシャス・バイアスについて学びましょう。

アンコンシャス・バイアス(unconsious bias)は無意識の、自覚のない、バイアスは、先入観や偏見を意味します。これをあわせてアンコンシャス・バイアスといい、無意識の思い込み、自身で気づいていない偏ったものの見方のことを表します。 常識の中に、アンコンシャス・バイアスは潜んでいます。
例えば、ジェンダーにおけるバイアス。「ランドセルの色は、男の子は黒、女の子は赤」や「働いて稼いでくるのは男性、家事担当をするのは女性」などの考えはアンコンシャス・バイアスの一つといえるでしょう。また年功序列・上下関係におけるバイアスもあります。「先輩の意見に後輩は従うもの」、「年下には敬語を使わなくて良い」という考えなどがよく見られる例です。その他にも、「いい大学を出ている人は偉い」といった学歴バイアスを始め、様々な例があります。

実はアンコンシャス・バイアスは、誰しも必ず持っているものです。アンコンシャス・バイアスは、これまでの自分の経験などから生じるもので、効率的・合理的な行動をするために日常的に使われています。アンコンシャス・バイアスそれ自体は、必ずしも悪いものではないのです。一方で、アンコンシャス・バイアスによって、誰かを苦しめてしまう可能性もあります。誰かの選択の自由を奪ってしまったり、無意識に傷つけてしまったりと様々な事例が考えられます。
その裏には、次のような思考パターン が潜んでいます。
論理的誤差:「AだからBだろう」と言う具合に、AとBに因果関係があると誤って認識してしまうことです。例えば、「他人に対してやさしいから、マネジメントが得意だろう」などと評価してしまうことが挙げられます。
ハロー効果:一部の良い点や悪い点に対する印象によって、他の点まで同じように思えてしまうことを指します。例えば、「あの仕事が早かったから、きっと仕事の速い人だ」と思うようなケースが考えられます。

これらはいずれも「思考の停止」からくるものです。常識に見える考え方の中にアンコンシャス・バイアスが隠れており、誰かを苦しめてしまうかもしれないということを忘れないようにしましょう。 ここまで属性と働き方の多様性と、アンコンシャス・バイアスについて学びました。ではこれだけ多様な在り方とアンコンシャス・バイアスがある中で、私たちには何ができるのでしょうか。
ここでポイントになるのが、対話による相互理解です。ここでの相互理解とは、お互いがお互いの価値観を理解し合っている状態のことを指します。相互理解には3つの価値観が重要です。自分の価値観。相手の価値観。そして企業理念や行動指針などの共通の価値観。この3つの価値観を、まずは知ること、そのうえでお互いに対話することで相互理解を目指しましょう。

いかがでしたか、本コラムでは「ダイバーシティ&インクルージョン」について解説してきました。属性の多様性はもちろん、現代では働き方やワークライフバランスの課題も組織は取り組まなくてはなりません。人は一人ひとり多様な価値観を持っているからこそ、自分の価値観だけで判断しないこと。そして相手と互いの価値観を理解するための対話の機会を設けること。このポイントを忘れず、全ての人が働きやすい組織を作っていきましょう。
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