中小企業とデザイン経営。デザイン経営の実践を通じて見えてきたこと | ミテモ株式会社
中小企業とデザイン経営。デザイン経営の実践を通じて見えてきたこと

中小企業とデザイン経営。デザイン経営の実践を通じて見えてきたこと

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2018年5月に経済産業省・特許庁より『「デザイン経営」宣言』が発信されて約4年。これを契機とし、大企業だけでなく中小企業においてもデザインを経営に取り入れながら、企業としての競争力向上に取り組む動きが活発化しています。 当社、ミテモ株式会社も経済産業省や中小企業庁、全国各地の地方自治体や中小企業の経営者のみなさまと共に各地でデザイン経営の導入を伴走支援しています。そんな中、「デザイン経営の実践を通じて見えてきたこと」と題して、近畿経済産業局が主催するセミナーにミテモ株式会社 代表取締役 澤田哲也が登壇いたしました。 各地のデザイン経営の導入支援プロジェクトを幾つかご紹介しながら、中小企業のみなさんが、デザイン経営を導入する意義と、導入することで繋がる可能性について、デザイン経営の導入支援プロジェクトを手がけている支援者の視点で紐解いていきます。

中小企業がデザイン経営に取り組む意義とは?

デザインを経営に取り入れている中小企業はまだまだ少ないものの、わたしたちが支援をしているデザイン経営を導入した中小企業の大半が「これまでにない製品・サービス・事業の開発・創出」「売上と利益」などの成果につながっています。このように、導入された企業の多くがその効果を実感している「デザイン経営」ですが、大企業以上に中小企業・小規模事業者にこそ有益な経営スタイルであると私たちは考えています。

中小企業にこそ有益な理由① 「付加価値の高いビジネスを実現し続けていくため」

持続可能なビジネスを実現するためには「付加価値」を生み出していくことが欠かせません。付加価値こそが、企業の利益の源泉であり、生命線です。大企業であれば、付加価値を生み出すために、豊富な資本=ヒト・モノ・カネを使用することができます。例えば、大量に商品を生産することで原価を削減し、付加価値を生み出すなどができます。 しかし中小企業・小規模事業者は限られた資本で効率的に付加価値を生み出し続けていく必要があります。では、どうすれば中小企業・小規模事業者は効率的に付加価値を生み出して続けることができるのでしょうか? その答えの一つは、独自性の高い事業・商品(技術)・サービスを生み出し、独自性を磨き、その価値を欲している顧客に届けることです。このような付加価値を創造していく営みに取り組む上で「デザイン」の思考・思想が不可欠なのです。

中小企業にこそ有益な理由② 「グローバルな競争環境に適応するため」

グローバル化が進む中、原材料を仕入れ、加工し、商品として流通するサプライ・チェーンが急速に拡がっています。物流コストが低下するとともに、地球上のどこにいても「より安く・より良い」素材、技術、商品の情報にアクセスすることができるようになりました。これまで国内の大企業を取引先として仕事をすることが多かった中小企業や小規模事業者は、21世紀に入り、グローバルな競争環境にさらされています。そんな中、長年の取引関係に依存するのではなく、自社ならではの価値とは何かを考え、商品開発やブランディングに取り組むことが中小企業・小規模事業者に求められています。 例えば、これまで地元の大企業を取引先として事業を営んできた中小企業A社を取り上げてみましょう。A社が、これまで取引先から選ばれ続けてきたのは「(地元だから)素早く対応してくれ」「(地元だから)輸送費などを考えると安価である」といった付加価値があったからです。しかし、グローバル化が進み海外企業と比較される中、A社のこれまでの付加価値は相対的に低下していくことになります。このような中で新たな付加価値を生み出していくことが中小企業・小規模事業者には求められているのです。 もちろん、グローバル化は脅威というだけではありません。今、日本国内でも地方発で独自性の高い事業・商品・サービスを生み出し、その価値を世界に発信していく様々なチャレンジが生まれています。デザイン経営を取り入れることで、グローバル化が進む21世紀ならではの事業展開を実現していくチャンスを掴むことも可能となります。

中小企業がデザイン経営に取り組むためには共創が不可欠

中小企業は大企業と比べて、人・物・財務などあらゆる側面で経営資源が限られています。だからこそ、デザイン経営を推進していくためにはデザイナーをはじめ様々な専門家の力を借りる必要があります。例えば、実際にデザイン経営に取り組む中で、新規事業を立ち上げようとすれば、顧客ニーズに通じている小売・流通事業者、材料調達、開発技術、流通チャネル、物流など様々な分野の知識が必要です。また、時には民間企業だけでなく、行政や業界団体の協力を取り付けていくことも必要となります。多様な利害関係者を巻き込んでいく上で重要なのは、ビジョンやパーパスが必要です。「このデザイン経営のプロジェクトに成功した先に何が実現できるのか」このビジョンやパーパスを利害関係者に、そして、地域内外に発信していくことが重要です。まず、こうしたビジョンが利害関係者全員にとって便益があるもの(All Winであるもの)であること、そして、ビジョンが強く、明確であるほど、より多くの利害関係者の協力を受けることができ、結果的にプロジェクトの推進力は驚くほど増します。  何より、デザイン経営に取り組むにあたって、最もエネルギーが求められるのは地域の事業者のみなさんです。そんな当事者であるみなさんが、やる気を持ち、本気で取り組み、熱意を持って困難を乗り越えることができるかどうかがデザイン・プロデュースの成功には不可欠です。他者を巻き込むだけでなく、事業者が常に目を輝かせてプロジェクトに取り組める状態をつくり、維持し続けること。このビジョンなくして、デザイン経営成功はのぞめません。

ビジョンからはじめるデザイン経営の推進プロセス

ミテモの地域共創事業において、ビジョンから推進するデザイン経営を推進する際のプロセスを示したものが下図です。
中小企業のデザイン経営プロセス デザイン経営を通して、ブランドを構築するためのパーパスやビジョンを創り出すためのBRAND DESIGNフェーズ。 パーパスやビジョンに基づきながら、誰のどのような課題を解決することで価値を生み出すのかを見定めるDESIGN INNOVATIONフェーズ。 そして、その価値を求める顧客に対して、唯一無二のものとして伝え、価値を届けるBRAND COMMUNICATIONフェーズ。
この三つのフェーズを段階的に進めていくのが、ビジョンからデザイン経営をはじめ、価値を生み出していくプロセスです。ミテモの地域共創事業では事業者とその支援者(デザイナー、アカデミア、行政、マーケター)とが協働していく場を創出していきます。
とりわけ重要なのが、パーパスやビジョンを創り出すBRAND DESIGNのフェーズです。ブランディングというと、ロゴマークを刷新したり、魅力的な映像やWEBサイトなどの「コミュニケーション」に注目が集まりがちですが、消費者が自ら様々な情報を取得することができる時代に、小手先のコミュニケーションだけでブランドを確立する事はできません。企業の経営姿勢、価値観に裏打ちされた一貫性のある意思決定や従業員の言動といったありとあらゆる行為の積み重ねがブランドをつくります。つまり、純度の高い組織文化こそがブランドであり、その根幹となるブレない・揺るがない軸となる、経営者や従業員が本気で信じるパーパスやビジョンを明確にすることがデザイン経営において最も重要であることはどれだけ強調してもしすぎることはありません。

デザイン経営をスタートするために必要なコアチーム

上述したこれらのデザイン経営のプロセスを推進するためには中小企業の経営者を主軸としながら、以下の3つの役割を担う人が集まり、コアチームを形成する必要があります。

中小企業のデザイン経営プロセス

経営・マネジメント:事業、戦略推進、持続可能な仕組/組織を作る デザイナー:洞察をもって顧客や社会が欲する”価値”を定義し、形にする 技術:戦略とアイディアを実現する、競争優位性の原泉となるコア技術を磨く

中小企業の場合、経営者が経営・マネジメントと技術を担うこともあれば、技術には通じているが経営・マネジメントはそこまで得意ではないこともあるかもしれません。重要なのは、不足している部分は外部リソースで補うこと。協力してくれるパートナーを巻き込むこと。そして、お互いがお互いのことを理解しながら、時にお互いの領域に踏み込んで協働を行うことでデザイン経営を推進していくことができます。特に経営者が「自分は技術のことしかわからないので、デザイナーやコンサルタントの先生の言う通りにする」というスタンスでは、いかに優れたデザイナーと協働したところで成果にはつながりません。デザイナーや外部パートナーの意向を理解しつつも、自社事業であるからこそのイニシアチブを持ち続けることがデザイン経営の共創において不可欠な要素となります。

どうすれば中小企業は共創パートナーをコアチームに招き入れることができるか?

様々な地域でデザイン経営に興味を持っている中小企業の経営者からよく相談を受けることの一つは「経営にデザインを取り入れたいと思ってはいるが、いいデザイナーと出会えない(出会う方法がわからない)」ということです。しかし、よくよく話を聞いていくと、そもそもどのようなデザイナーがいるのか、自社が必要としているデザイナーがどのような人なのかを理解できていないことがほとんどです。数人しかデザイナーを知らない状態で、自社に合うデザイナーを選ぶことなどできるはずがありません。WEBや雑誌などでもデザイナーを検索することは可能な時代です。まずはたくさんのデザイナーのポートフォリオを見る、展示会などに足を運び、実際にデザイナーが手がけた商品やサービスに触れてみる、デザイナーが登壇しているトークイベントなどに足を運び話を聞いてみる。「知り合いの知り合いだから」「地元で活動しているから」といった理由ではなく、自社が目指したい世界観に共鳴してくれるパートナーは誰なのかを貪欲に探し求める必要があります。

そして何より中小企業が自社に不足している領域を補い、共創パートナーを招き入れることができるか否かは、その中小企業の経営者自身のビジョンや人柄次第です。

もちろん、パートナーとしてデザイン経営に参画する以上は、正当な対価を支払うべきです。そして対価の支払い方はイニシャル(前払い)だけでなく、ロイヤルティやレベニューシェアなど事業の成長や将来の利益を分け合う形で契約を締結するなど多様な選択肢があります。つまり、すぐにお金を支払えるかどうか以上に、パートナーがその中小企業と一緒に挑戦したいと思えるかどうか、一緒にリスクをとりたいと思えるかどうか、そこに成長性があると感じられるかどうかが重要なのです。

ミテモ株式会社が企画・運営に携わっている
主な実績・プロジェクト

地域の豊かさにつながる公共事業、地域とともに共存共栄するための民間企業との協業など、地域経済循環につながる事業・プロジェクトをさまざまなステークホルダーと共に共創しています

ソリューションラインナップ

要件・仕様が固まっていない段階からでも、お気軽にご相談ください。地域共創事業経験豊富なプロデューサー/ディレクターが事業企画の検討段階から、ディスカッションを伴走し、財源確保も含めて一緒に想いを形にしていきます。