FUXION EVOLVE ~中小企業の新価値創造プロジェクト~3年間の歩みとこれからの進化 - ミテモ株式会社

FUXION EVOLVE ~中小企業の新価値創造プロジェクト~3年間の歩みとこれからの進化

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実施概要

事業名

名古屋市FUXION EVOLVE

実施内容

  • デザイン経営を活用した事業開発を学ぶシンポジウム、セミナーの実施
  • 0→1で事業開発にチャレンジする事業者と、そこを支援し実践知を積みたい支援者、デザイナーとの協働での事業開発ワークショップ
  • 1→10で事業開発したが、伸び悩んでいる取り組みを戦略策定から実売までを実践していく個別事業化伴走プログラム

2021年に開始した名古屋市中小企業ブランド等構築支援事業「FUXION」。このプロジェクトは、セミナーイベントやワークショップ、ハンズオン支援を通じて、ものづくり中小企業とデザイナーやビジネスパーソンによる支援者などの外部人材が協働して、事業開発に取り組む約8ヶ月のプログラムです。このプロジェクトを過去3年間行い、4年度目となる2023年には、新たに「FUXION EVOLVE」として活動内容をアップデートして再始動します。本記事では、これまでの活動を具体例と共に紹介し、本プロジェクトが発展した理由と支援内容について紹介していきます。

実施背景

事業の伴走支援が必要な理由

多くの自治体が持つ中小企業支援の課題の1つに、「ものづくりの中小企業に対する補助金施策が、届けたい事業者に届かない」という課題があります。また、「既存事業の効率化などはイメージできるが、新しい事業や新しいチャレンジのイメージがわかず、補助金の申請につながらない。」という事実もよく自治体担当者から伺います。

このFUXIONの取り組みが始まる背景として、名古屋市が平成元年に世界デザイン博覧会を契機に宣言した「デザイン都市宣言」というものがあります。この宣言は、デザインを単なる装飾や衣裳として捉えるのではなく、生活文化の一つとして重要なものと捉え、デザインを大切にする風土づくりとしてデザイン都市を創造することを目的としています。名古屋市がものづくりやデザインというものに対して、強く意識を持ち支援を推進している背景はありつつ、その「事業への支援」には、他の自治体同様に課題を抱えていました。

さらに、自治体や振興財団などの支援団体から専門家を派遣する施策なども、事業者に対して知識やリソースを「与える」「教える」ことが主な支援となり、事業者自身が主体的・継続的に事業に取り組みづらい状況を生み出しています。事業者自身が実践を通じて学ぶのではなくただ知識を与えられるだけでは、支援が終わったら取り組みが止まる、頓挫する。ということが当たり前に存在する現状がありました。

一方中小企業側としても、新事業や新商品開発に取り組むリソースが社内・外合わせても無かったり、日々の業務に追われる中で自分たちが何を目指すべきなのか、過去や未来の整理ができていなかったり。そして、そもそも新しいことへの取り組み方が分からないという課題を抱えていました。

これらの課題に応えるために、過去3年間行なってきたFUXIONでは、中小企業が主体的、且つ継続的にイノベーションを実施していくために4つの要素が必要であると結論づけ、そこにフォーカスし、プロジェクトを構成していきました。

1.ビジョン/軸を持つこと
2.デザイン態度を習得すること
3.仲間やポートフォリオを持つこと
4.“勉強”でなく、”実践”すること

これら4つの要素は各ワークショップを通じて、事業者らが習得できるよう伴走していきました。例えばビジョンを言語化したり、自分たちの事業のお客様の課題やニーズの仮説を立てたり。最終的には商品やサービスの検討からプロトタイプの制作までを行なっていただきました。

これらの過程にはデザイナーやビジネスパーソン、アドバイザーの”仲間”=支援者が加わり、本業では経験できない実践知や関係性を得ることで、経営者自身が有しないスキルを補完し、仲間たちとともに事業を自走できる力を身につけていけるよう支援していきました。

具体的な取り組み

進化し続ける支援の形

デザイン経営の手法に基づく新事業の開発と、その後の拡大を支援する「新価値創出プログラム」は、この3回で25社 の事業者にご参加いただきました。新商品・サービスという形だけでなく、新たな仲間を得たことや、ワークショップが終了しても事業者自身が主導し事業開発を推進できる力を身に付けたことが、本プロジェクトの成果と言えます。

そして2023年から始まるFUXION EVOLVEでは、これまでの、外部人材とともに新商品・新サービス創出に取り組む「新価値創出プログラム」に加えて、新たな施策として「事業化伴走プログラム」を開始します。

事業化伴走プログラムは、中小企業が生み出した新商品・新サービスのブラッシュアップや、ブランディング戦略立案、ビジネスマッチングなどの販路開拓の伴走支援を行うことで、新規事業の事業化を支援していくプログラムです。自社の強みやビジョンが既に整理され、コンセプト作成や新商品・新サービスの施策が行われている企業に対して、「マーケティング」「ブランディング」「組織づくり・仕組みづくり」の3つの面から事業化の支援を実施していきます。

  • 1.マーケティング:マーケティングの専門家と共に、戦略立案・テスト販売を試み、商品・サービスの改善を行うことで商品価値を向上させます。
  • 2.ブランディング:ビジョンの更新やブランド戦略を立てることによって競合との商品・サービスの違いを生み出します。
  • 3.組織づくりと仕組みづくり:事業開発コアチームづくり、成長戦略立案を行うことで、さらなる成長につなげるための組織と仕組みを作ります。

「新価値創出プログラム」が0から1を生み出すプロジェクトだとすると、「事業化伴走プログラム」は1を10にするプロジェクトだと言えます。既に構築された商品・サービスをより発展させていく支援になるため、その支援方法は事業者毎に細かく個別にアジャストしていきます。

支援内容には、個別ニーズに応じて、ブランディング、デザイン、デジタルマーケティング、営業・販売戦略、海外進出などの専門家・アドバイザーとのマッチング。テストマーケティング活動におけるブランドコミュニケーション設計と、ロゴやキャッチコピーやパッケージデザインなどのツール類の支援も含まれます。

参加事業者を中心に、現状の商品・サービスにどんな課題があるのかを共に考え、統括コーディネーター、支援担当者が課題に応じた専門家を派遣しながら、マーケティング戦略や成長戦略を共に描いていきます。

過去FUXIONのプロジェクトに参加いただき、商品・サービスを生み出し、テスト運用や販売に至った事例を2つご紹介します。この2つの事業は2023年度から始まるFUXION EVOLVEの対象となりうる要件を満たす事業者でFUXIONの「新価値創出プログラム」で生まれた新商品・サービスを事業化するフェーズに移行しています。

事例①船橋株式会社:実際に動くことで見えてきたこと

名古屋市に100年続く船橋株式会社。この会社は業務用で使われるレインウェアや防水エプロンを手掛ける企業です。縫い目の無い特殊な縫製技術が創業時代から受け継がれていましたが、その防水製法の技術を引き継ぐためにも新たな事業拡大や商品の拡充の必要性を感じていました

2021年度のFUXIONに参加し、まず自分たちが顧客や世の中に届けている価値を言語化するところから始まりました。そこで「滴(テキ)の中で懸命に働く人たちがヒーローのように生き生きと輝いてもらいたい」という想いを込めて「滴(テキ)の中で輝けるために」というブランドビジョンを言語化しました。

ブランドビジョンを明確にしたと同時に、プロジェクトでは対象となるお客様が商品をどう使っているのかを知るため、実際に働いている魚市場や漁港へ赴き市場の魚屋さんや、漁師さんのところへ観察に行きました。その現地の観察で「エプロンがまな板と擦れて破れてしまうので、補強するために2枚重ねて使う」という、使用者にしかわからない細かな課題やニーズ、そしてその背景を発見したのです。この調査を元に、本プロジェクトでは新商品のプロトタイプ制作からデザイン戦略・売上計画までを作り上げることができました。

さらには「既存商品の改良」にまで、アクションを広げ、実施するところまで繋がりました。経営者自らがこのプロジェクトに参加いただくことで、新商品・サービスの検討から決定までをスムーズに行い、さらに既存のビジネスを活性化させるアイディアにまで繋げることができるのです。現在は、FUXIONで設計した売上計画などをより具体的に設計し、事業化させるプランを検討している段階です。

事例②長屋印刷株式会社:当たり前だと思っていたことを価値にする

2022年度のFUXIONにご参加いただいた、長屋印刷株式会社は創業100年以上続く印刷会社で、これまでも長い間「お客様の伝えたい(やってみたい)というイメージを印刷する」という形にし続けてきました。自分たちが印刷事業として「あたりまえ」に提供できる価値を改めて見直し、そこに価値を見出すということを明確にすることで、「やってみたいをカタチにする」というブランドビジョンを掲げました。

この想いを元に具体的な商品・サービス開発のフェーズでは、幼稚園や小学校に通う子供の造作作品を1冊の絵本に収める「こどもの絵本」サービスのアイディアが生まれました。このサービスは子どもが学校などで制作した工作や絵画などを「子ども作品収納箱」に保管していただき、お客様の好きなタイミングでその箱を送っていだくと、その箱の中に収納されている作品をデータ化し絵本にするというものです。

そして現在、ステークホルダーとの関係、収益創出のタイミング、他サービスの発展のさせ方など事業を広い視点で考え、マーケティングの戦略やプロモーションの方法を決定し、具体的に事業を展開する方法を検討するフェーズへと移っています。

今後の取り組み

自走し、持続できる力を身につけてもらうために

自治体の中小企業の支援の1つとして「デザイン経営を学ぶこと」は、多くの地域でも行われていることですが、そこで見られる課題として、事業者が「学ぶ」だけに留まり、支援の手が離れれば自走できず新商品開発や事業開発が止まってしまう現状があります。これはDX支援などにも同様のことが言えます。
そのためFUXIONは、デザイン経営を「学ぶ場ではなく実践する場」として、あくまで参加者自身が主体となり実施することを大切にしてきました。そして、これまでの3年間デザイン経営を軸に段階的支援を行ってきましたが、4年目となる2023年度からは「質の良い事業をビジネス化し、持続させること」も目標の1つに加え支援を推進していきます。

商品開発にまで至るデザイン態度を身に着けた事業者の方々が、これまでの支援を通じて徐々に増えてきた今だからこそ、支援をさらにアップデートし、事業を発展・継続させる力を身につけるためのプロジェクトを行っていきます。もちろんこれまで行ってきた「新価値創出プログラム」も継続して行いながら、どちらも同様に「持続可能な力」を身につけることを最大の目的として取り組んでまいります。

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