インバウンド旅行者向け地域固有の魅力を活かした高付加価値観光メニュー開発 | ミテモ株式会社

インバウンド旅行者向け地域固有の魅力を活かした高付加価値観光メニュー開発

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本レポートはセミナーの概要とポイントを抜粋したものです。

高付加価値なインバウンド観光事業を作るための手法や視点、そしてその具体的な取り組みについてはアーカイブにてご覧いただけます。

本セミナーは「インバウンド旅行者向け 地域固有の魅力を活かした高付加価値化メニュー開発」をテーマに、主にラグジュアリー層に向けたツアー商品の作り方や観光事業を運営していくための仕組み作り、奈良県における開発事例について、ミテモ株式会社 代表取締役澤田哲也より紹介させていただきます。

インバウンドの回帰・再開

コロナによって止まっていた人や物の流れが昨年からようやく動き出しました。インバウンドも回帰・再開の流れがある中で、いよいよ自分たちの地域も受け入れに向けて取り組んでいきたいというご相談が増えています。地域固有の文化資本を活かしたインバウンド観光事業を作るうえで、キーワードとなるのが「高付加価値化」です。

コロナ以前から、訪日外国人一人当たりの旅行消費額の拡大においては課題がありました。我が国の「明日の日本を支える観光ビジョン」(2016.3.30観光庁策定)では、訪日外国人旅行者数6,000万人、訪日外国人旅行消費額15兆円という目標値が設定されています。しかし、訪日外国人旅行者が3,188万人と飛躍的に増加したコロナ以前の2019年でさえ、旅行消費額は4.8兆円と目標額に対して大きく乖離しています。

若い世代で高まるモダンラグジュアリー志向

訪日旅行者の中でも、今後の旅行消費額拡大の鍵を握っているのが富裕旅行者層=ラグジュアリー層です。とくに注目したいのが20-40代の意識の変化です。JNTOの調査において、20-40代を中心に「文化、起源、遺産、スタイル、独自性、本物、質」を重視するモダンラグジュアリー志向が増加していることが指摘されています。また「東京、京都、大阪以外の地方でローカルな体験がしたい」「Googleでは検索できない本物の体験をしたい」といったニーズが高まってきていることが調査から明らかになっています。(富裕旅行市場に向けた取組について 2020.10.5 JNTO資料より)実際に当社が支援に携わった現場においても、モダンラグジュアリー志向をお持ちの方々が来ておられることを実感しています。

こうしたニーズの高まりがあるものの、旅行者側からすると地方のどこに行けば高付加価値な体験ができるのかがわからないのが現状です。地域側も、ラグジュアリー層に価値提供ができるポテンシャルがあるにも関わらず、文化資本をどのようにコンテンツ化 (=地域固有の自然を活用した体験型観光サービスの提供、観光体験の高付加価値化など)して発信すれば良いのかわからなかったり、ラグジュアリー層の旅行者を受け入れるノウハウを持っていなかったりするという現状があります。こういった旅行者側のニーズと地域側の事情のミスマッチをどう解消するかは、当社が取り組んでいる課題の1つでもあります。

観光事業を地域経済の活性化につなげるために

地域固有の文化資本を活かしたインバウンド観光事業の企画・開発においては、単に収益を上げていくだけではなく地域経済の活性化につなげていけるかどうかも重要です。

旅行者の予算のうち、多くの部分が宿泊・移動、食品に消えていく中で、経済的な効果をしっかりと地域に波及させていくためには、宿泊場所の設定、どのような体験を提供するか、作った商品をどのように売っていくのか、さらにはインバウンド受け入れのための人材確保や育成といった様々な課題に対応していく必要があります。

また、断続的・連続的に魅力的なコンテンツを生み続けるためには地域を編集していける人材を育て、地域内の様々なプレイヤーとの豊富なネットワークを形成しつつ、更には地域外のパートナーとも連携を図っていけるようなチームを育てていくことが、非常に重要です。組織形成やネットワーク形成ができておらず、中心になるような人材が育っていない状態では、どんなに高付加価値な観光事業を作ったとしてもなかなか根付かず、その事業が地域活性化に寄与することもありません。

ミテモの地域共創事業では、あくまで地域の皆さんが中心となってプロセスや考え方を学び、自分たちで地域をプロデュースするということを推進しています。その上で、エージェント、トラベルデザイナーといった専門家のアドバイスや、当社が培ってきたノウハウをご提供させていただきながら、事業終了後も地域の中で魅力的なコンテンツを自創していけるチーム作りを支援しています。

高付加価値な観光事業を作る

高付加価値なインバウンド観光事業の開発はプロダクトアウトではできません。つまり、地域側がこれを売り出したい、作りたいと思っていても、お客様にとって価値あるものでなければ買っていただくことはできないのです。

一方で、顧客視点・市場視点で商品企画をすることも大切ではあるのですが、即座にコモディティ化していってしまいます。その地域ならではの価値を発信するという観点だと、やはりマーケットインだけでも難しいといえます。

高付加価値な観光商品の企画に適した手法は、アーカイブにて解説しています。

また戦略立案においては、自分たちの地域ならではの資源とは何かを捉えることが必要です。アーカイブでは、地域資源が持つ「コンテンツに磨き上げることのできる」ポテンシャルを見出すための評価軸や指標、具体的なバリュー分析の方法を紹介しています。

いずれにせよ、高付加価値化を図ろうとするとコストがかかります。売れば売るほど、地域や事業者が疲弊してしまったというのではいけません。「手間暇」も含めたコスト計算ができる人材をチームに引き入れながら、高付加価値化を図っていくべきです。観光事業の造成においてもまずは戦略策定より座組を作っていくことに力を割いてスタートしていくのが良いでしょう。

地域資源にまつわるファクトの洗い出し

バリュー分析によって自分たちの地域資源のポテンシャルを見出せたら、ターゲットとテーマ性を考えます。つまり、どの市場の誰をターゲットに、何を売りにしていくのかということを見定めるのです。それらを落とし込んで、観光メニューを作っていきます。

これまで商品開発に関わってきた中で、観光商品作りはリサーチありきであると痛感しています。その地域ならではの意味づけ、「この場所だからこの体験をするんだ」ということの独自性の強さは、リサーチの深さと相関すると考えています。

また、観光商品開発における「ストーリー」の部分においては年代・時代の数字もとても重要になります。ストーリーとは、このツアーに参加する意味や意義が一体どこにあるのかということを示す部分です。

例えば「300年続いている」といった数字の部分を学芸員にチェックしていただくと、実は文献では確認されていなかったということがわかったりします。ガイドが地域のことを語る中で、誤った歴史の解釈が増長されるというのはもってのほかです。学芸員をはじめとする専門家との関係性も作りながらツアーを作っていくということが非常に大切です。

コンセプト設計

このような地域資源にまつわるファクトの洗い出しとコンセプトの設計は、エージェントや学芸員などいろいろな人の間を行き来しながら合意形成を図っていくことになります。

本セミナーでは、体験商品の具体的なコンセプト設計事例として『LOCAL CRAFT JAPAN』という当社の活動の重点地区である、奈良県吉野地区での取組を紹介しています。吉野林業をテーマにしたこのツアーのコンセプトはいかにして形作られていったのかは、アーカイブにてご覧ください。

インバウンド旅行者は「文化」を体験することに価値を感じる

体験設計 とは、良い顧客体験をどのように提供するかということです。高付加価値な観光事業を作るにあたっては3つのポイントがあります。1つはその土地ならではの体験を盛り込んでいくということ。2つ目に地域の人との交流を入れ込んでいくということ。そして3つ目にその場をどう学びとして体験していただくのかということです。

「学び」といっても何かをレクチャーしたり、ただ話を聞いてもらって勉強してもらうということだけではありません。旅行者自身が、その体験を通して新しい世界や価値観に出会っていけるかどうかがポイントです。

インバウンド旅行者と接していると、単に「体験できる」ということや、技術を体得することそのものよりも、文化を学ぶということに重きを置いている方が非常に多いです。

また、インバウンド旅行者の意識として、自分たちがその地域に滞在したということが地域にきちんと還元されているかどうかについて、非常に意識的でいらっしゃると感じています。

こういったインバウンド旅行者の最新の動向を踏まえた体験設計のポイントについてはアーカイブでご覧ください。さらに、奈良県吉野地区でのツアーに実際に参加していただいた旅行者からのコメントやフィードバック、地域資源を活かした価値設計のポイントについても実際のエピソードを交えながら解説しています。これから観光メニュー造成に取り組まれる方はご活用ください。

「商品を作って終わり」にしない

観光メニューの開発に立ち会っていると「商品を作って終わり」になってしまっているケースが散見されます。

観光庁の補助などを受けながら行っている開発事業は単年度の中で完結しなければならないことも多く、観光メニューを作ってガイド育成のための研修をし、その後モニターツアーやサブトリップを行ったところでいったん事業として終了するケースが多いのです。

作った商品を事業として成り立たせていくためには「ロードマップを作る」「体制構築」「販路確立」の三つが肝心です。

ロードマップを作る

ロードマップとは「三か年計画」のことです。ロードマップにはざっくりと、今年度から再来年度にかけて何をするかということ、とくに商品政策、体制構築、人材育成として何をするか、収支としてどれくらいを見込んでいくのかということを落とし込んでいきます。

体制構築―インバウンド観光人材の育成

インバウンド旅行者の受け入れ体制を構築するためには、人材育成が非常に大切です。とりわけラグジュアリー層が対象となると、地域の観光資源について自分の言葉で語れるガイドや臨機応変なコーディネートができるトラベルデザイナー、ラグジュアリー層にしっかりとご満足していただけるようなホスピタリティ人材の育成が課題といえます。

販路確立

販路の確立も重要です。インバウンド観光事業においては、国内のランドオペレーター、海外のエージェント、そして旅行者への直接的なアプローチと大きく3つのチャネルがあります。それぞれのチャネルを使うことのメリットや懸念点を踏まえながら、地域の体制に応じて段階的に販路を確立していきます。

商品を作り上げる過程というのは大変なことです。その分、商品を作り、ファムトリップを行って、お客様に満足いただけたという経験は地域の自信になります。

しかし、事業が終わった後は結局誰も来てくれなかったということになると、関わってくださった地域の方々がかえって自信を無くしてしまうことにも繋がりかねません。そういった意味でも、商品を作って事業として続けていくということは非常に重要なのです。