さまざまな企業や団体においての採用やインターンの取り組みをサポートしている。
今回は、高岡市役所産業振興部(以下、高岡市)さまからご依頼を受け、高岡市に所在する企業向けにインターンシップの作り方研修(セミナー)を開催した。このセミナーにおける高岡市さま側の狙いや、今後の展望などを、インタビューを通じて紹介する。
ケーススタディ概要
ケース
採用活動をレベルアップする!今時の学生が求めるインターンシップの作り方研修
目的
採用インターンシップの実施方法を学ぶことで採用活動をより良い状態で進められるようになる。
ワークの流れ
ワークショップ参加者
高岡市内の中小企業の採用担当者、経営層の方々など合計30名
所要時間
2時間
活躍する場所として、学生たちに高岡市を選んでもらうためには
ミテモ井上(以下、井上):本日はよろしくお願いいたします。まずは今回セミナーのご依頼をいただくまでに、どのような背景があったのかということからお教えいただけますか?
水野さん:はい。富山県の有効求人倍率は全国平均よりも高い状況が続いています。高岡市内の経済団体が行った調査でも、従業員の確保が経営課題の上位にあって、中小企業は人材確保に大変苦労しているということがわかっていました。併せて、地域活性化には企業の事業発展が不可欠で、その中核を担う人材確保は喫緊の課題ということがずっと言われていたんですね。そこで、高岡市と経済団体の代表という位置づけの商工会議所、そしてハローワーク高岡の三者で、そういう課題に取り組んでいこうということで「たかおか企業人材確保推進協議会」という協議会がつくられました。
井上:協議会の取り組みが始まったのは、いつごろですか?
水野さん:協議会は平成28年にできました。協議会では首都圏等で開催される移住・転職系のイベントに参加して、移住希望者と面会して就職相談にのったり、その後の高岡での就職活動へ繋げるようなサポートをしています。また若い人に県内に定着してもらうためには、まず若い人たちに早い段階から故郷の良さや地元の企業について知ってもらうことが大切だと考え、学生向けの企業見学バスツアーや市内の高校へ出向いてキャリアサポートセミナーを実施しています。仕事を通してのやりがいや地元での生活などについて高岡で活躍中の企業の方にお話いただくことで、高岡の特色ある企業を知ってもらうだけでなく、故郷に住み続けて働くことの素晴らしさも伝えられたらと考えています。
井上:今のお話から、これまでは高校生や大学生などの若い方に向けた取り組みをされてきたように思えたのですが、今回企業向けに働きかけをし始めたきっかけは何かあったのでしょうか?
水野さん:国の地方創生の動きを受けて、首都圏の大学と連携し、大学で学ぶために首都圏に出ていた若い人たちを卒業を機に地元へ呼び戻す「人材還流」が検討されました。でも、いくら地元の人が戻ってきてほしいと願っても、学生の皆さんは自分の学んだ知識を活かせるところで活躍したいはずだと思うのです。そう思った時、地元にその思いを叶える企業があっても、学生さんが知らなければ、それはその企業がないのと同じじゃないかなと思ったんですね。そこで、「企業と学生をつなぐ輪が広がって、そして地元の企業をたくさんの学生さんに知ってもらえるよう、インターンシップに取り組む企業の受け皿をいっぱい増やしていければなぁ」という思いから、インターンシップ・セミナーを開催しようということになりました。
ミテモ森本(以下、森本):インターンシップ・セミナーを引き受けてくれるところを探していたという話をされていて、他にも引き受けてくれるところがあったと思うのですが、なぜミテモを選んでいただけたのですか?
水野さん:インターネットで「インターンシップの研修」と検索して、いくつかの企業は見つかったんですね。その中で、インターンシップに取り組んでいない企業さんや、「インターンシップのやり方はこれでいいのかな?」と悩んでいる企業さんに、ちょうどぴったりくる研修内容なんじゃないかなと思って、お願いすることにしました。
森本:それは嬉しい言葉ですね。
インターンシップで大切なことは「愛情」
井上:実際に研修をオブザーブして、話を聞いたり資料を見たりして、印象的だったシーンはありましたか?
水野さん:そうですね、森本先生の資料の中に「愛情」っていう言葉が出てきて、すごい心に残る言葉だなと思いました。
森本:一番伝えたかったところがここですって、研修の最後に話したところですね。
井上:受講された企業さんにとっても、そのワードは響いていらっしゃいましたか?
水野さん:そうだと思います。とても熱心に聞いておられる方もいらっしゃって、アンケートの結果でも多くの方がご満足頂けているので、伝わっていたのではないかなと思っています。
井上:森本さんにとっては、今回のセミナーの参加者の皆さんはどのように映っていましたか?
森本:皆さん、切実な感じでしたよね。真面目に受講されていて「こういうときはどうしたらいいですか?」と最後に残って質問してくれた方もいらっしゃいました。もちろん全員が全員そんなに切実かって言われたらわからないですけど、大部分の方は「ここから何かしらを持って帰ろう」という感じでしたよ。
井上:それは良かったです。反対に、今回実施してみて、高岡市さん側で感じている手ごたえは何かありますか?
水野さん:我々としては、今後も首都圏の学生さんを高岡の企業のインターンシップへ誘導したいという思いがあるので、今回参加していただいたようなやる気のある企業さんを中心に声をかけていきたいなと思っています。
井上:ちなみにZoomを使ったセミナーは、今回が初めてでしたか?
水野さん:この協議会で使ったのは初めてですが、別の事業では使ったことがあります。商工会議所や企業の方はZoomを使ってのセミナーに慣れておられるのか新型コロナウイルスが心配だから、会場に集まるよりZoomのほうがいいという声も多かったみたいです。
森本:初めて参加した方もいらっしゃったけど、1、2回受けたことがある方もいらっしゃったんですね。
水野さん:そうですね。最近はZoomが主流になってきています。一気にオンライン化が進んだっていう気がします。
ミテモだからできたこと、ミテモがこれからできること
井上:ここで森本さんにお伺いします。今回インターンシップについての研修のご依頼をいただきましたが、ミテモだから出来たことは何かありますか?
森本:我々だからこそ出来たソリューションですよね。「我々だからこそ」を主語にするのがすごく難しいなと思いましたが、強いて言うなら、大きく三つポイントがあるのかなと思います。一つは、私たちって日本全国の色んな企業さんから課題について聞かせていただくんですよね。例えば東京や大阪にある大企業もそうですけど、地方都市にある大きな企業さんからもう少し小さい企業さんまで、多様な地域の多様な企業が今どういう課題を持っているのか、お話を伺う中でわかるわけです。どこかのエリアにしかない企業だと、それはできなかっただろうなと思いました。もう一つは、私自身の経験なんですけど、(教員時代に教えていた)私の教え子は今まさに大学3年生で、「これから就活です」っていうタイミングなんですよね。なので、学生サイドがどういうことで悩んでいるかも分かっていて。つまり、企業の人事担当と学生側、双方の悩みやテーマがわかるので、ここへどのように橋をかけていく必要があるのかわかっていたように思います。採用系のソリューションを提供している企業って世の中に沢山あるんですよね。でも、学生側の思いも企業側の考えもわかっている人っていう多分そんなにいないと思うんです。なので、それが二つ目の価値だったのかなと思います。それと、もう一つあって。その三つ目が、ミテモはいろんなものを教材化しているんですよね。それには、いわゆるラーニングデザインという技術を使っていて。インターンの領域を教材化する時も、教材制作で用いるラーニングデザインの技法を持ち込むことで、「このような学習プロセスを踏めば作れる」ってわかっているんですね。それはミテモの価値かなと思います。
井上:ありがとうございます。「様々な視点を持っていて、かつ、ラーニングデザインの技術がある」ということが、ミテモの強みなんですね。
森本:水野さんに一つ伺ってもいいですか?今まで市内の企業の課題として挙がっていたのが、「インターンに参加してもらいたい」、「参加者を受け入れられるようになりたい」など採用についての話でしたが次の課題として挙がっているものはありますか?
水野さん:まだ検討中ではありますが、セミナーの際のアンケートでは「自社のPRの仕方」や「働き方改革」に関するセミナーをやってほしいなどの声はありますね。
森本:採用はどこもかしこも、頭を悩ませていますからね。働き方についても、実は採用とつながっているところがあって。学生を集めることに成功したとしても、組織の中での働き方が魅力的じゃないと、その後の採用で志願してくれなくなってしまうんですね。だから、「採用」と「働き方の充実」と両方大切なんですよね。
井上:そんな高岡市さんとミテモがこれから一緒にできそうなことって何かありますか?
森本:さっきからいろいろと考えたんですけど、すぐに小さく出来ることと、大きく入り込まなきゃ出来ないだろうなってこと、両方あるなと思いまして。パッと小さく出来るのは、今回のようなオンラインセミナーをしたり、単発のワークショップを実施するといったことですね。もうちょっと大きくやろうとすると、企業の現場が欲しい人材を整理し、そこにマッチするスキルセットを持っている人が、どういうところでどのように働いているのかリサーチなどをして。そして、どうすれば高岡市の企業さんとそのような人材がマッチングできるのかと考えて行くという、大きなプロジェクトになっていくのかなと思います。
井上:いろいろと一緒にできそうな感じがしますね。
森本:あとはインターンを実際にやってみて、うまくいった部分といかなかった部分が企業側から出てきた頃にまたお話聞かせていただけると大変いいなと思います。
井上:そうですね。またこういったインターン・セミナーを実施しようと、考えていたりしますか?
水野さん:他の事業との兼ね合いもありますが、できればやっていきたいと思います。
井上:こういったセミナーは 1回でうまくいくのはなかなか難しいと思うので、定期的に開催してバージョンアップをしていけたらいいですね。では最後に水野さんから、一言お願いします。
水野さん:今回はインターンシップの作り方研修ということでしたが、インターンシップに限らず、採用に関わる多くのヒントをいただいたような気がしています。また機会があったら是非お願いできたらいいなと思いますので、よろしくお願いします。
森本:是非、こちらこそよろしくお願いします。
井上:本日はお時間いただきまして、ありがとうございました。
一同:ありがとうございました。
ファシリテーター 森本からひとこと
森本 康仁
ミテモ株式会社
小学校教員から始まった私のキャリアにおいて、学生時代に経験した小学校でのインターンシップは私のキャリアとキャリア観に大きな影響を与えてくれたとても大切なものです。
近年、多くの企業がインターンシップを始めていますが、インターンシップがどういったものなのかもよくわからないまま、手探り状態で実施している企業も多く、せっかくの機会が十分に生かせていないという話を知り、そこにもやもやとしたものを感じています。
本研修を受講してくださった企業の方々が学生たちにとって少しでも魅力的なインターンシップを実施できるようになってくれると良いなと思っています。