理念策定プロジェクトにかけた想いを語る - ミテモ株式会社

理念策定プロジェクトにかけた想いを語る

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本コラムはハウスギャバンの企業理念策定プロジェクトに関わったメンバー3名(ディレクター:飯田、ファシリテーター:元木、コピーライター:柳瀨)の、プロジェクトに対する想いを鼎談した際の記録です。こちらのコラムと併せて、以下のケーススタディ記事をお読みいただけますと幸いです。

飯田:ハウスギャバンの皆さんがおっしゃっていましたが、他社からの提案は「とにかくひたすら対話をしましょう」というものだったようです。一方でミテモは、レゴ®ブロックを使ったワークやコピーライティングの提案があり、またプロジェクトの内容を柔軟に対応してくれそうだと感じ、評価してくださったようです。
対話をするというのはミテモも同じですが、そこにしっかり段階を設定していたのがひとつのポイントかもしれません。たとえば、初回には丹念なアイスブレイクとチームビルディングをしましたし、2回目ではハウスギャバンの歴史を取り扱い、関係者にインタビューしてきていただきました。本格的にアウトプットをするまでのプロセスをかなり抑えぎみに、あえて遠回りに行くということを、意識していましたよね。

元木:いきなり会社のことを話してと言われても、あまり出てきませんからね。単純な言葉じゃないものを言葉に掛け合わせていくことはすごく意識しました。お互いの似顔絵を描いてもらったり、会社の年表を作ってみたり、会社のアイデンティティを擬人化させたうえでその人だったら何を見て何を思っているかを考えてみたり、会社の価値観をレゴ®ブロックで形づくってみたりなど。これらのプロセスを踏んだからこそ、結果として深く語れていたのだと思います。会社の今と会社のこれからを「立体的に知る」ことを意識してプログラムをデザインしました。

飯田:「単純な言葉じゃないもの」というのは、身体的・非言語的といったことへの意識ですか?

元木:身体的・非言語的というのはその通りなんですが、それだけだと「へー」で終わっちゃうんですよ。だから、もう一歩踏み込んで言語化したいですね。
柳瀨さんはコピーライティングのプロフェッショナルとして、私や飯田さんがいなくてもコピーをつくれたと思うんですよ。とはいえ、今回のプロジェクトメンバーの皆さんのあの雰囲気をつくれたということに、僕らがいた価値はあったと思っていて。柳瀨さんからみて、ワークショップのプロセスがあったからこそいいコピーをつくれたなど、そういった感覚があったなら教えてほしいです。

ワークショップのファシリテーターを務める元木と参加者

コピーライター柳瀬への発表の様子

柳瀨:私が感じたのは、飯田さんと元木さんの人間力ですね。スキルが高いのはもちろん、「この人がいると場が明るくなる」とか「なんだかこの人楽しそうだな」とか、そういう力がいい影響を与えていたと思います。私は、プログラムの前半はオブザーバーという立場で見学させてもらったんですけど、場の空気づくりはすごいなあって思いましたね。
例えば、週に一回試合があるサッカー選手がその試合に挑むためにどう過ごすかというと、ほとんどの時間は練習とリカバリーに割きますよね。試合は90分ですから、本番は週に90分しかない。そのたった90分のための準備がすごく大事なんですよ。そして、このフィロソフィーづくりでも同様のことが言えます。ワークショップの初めは、ストレッチのように「まずお互いのこと知りましょう」と体をあたため、相手を想定して練習する時間だったんじゃないかなと思います。試合に相当するのは、このプロジェクトの最後の約1か月半。画面には中継されない練習という部分で、試合のパフォーマンスがすべて決まる。今回のプロジェクトの準備はすごく良い準備だったと思いますし、繰り返しになりますけど、その雰囲気やムードがすごくよかったですね。

飯田:私たちに人間力が実際にあるかどうかはさておき、人間らしさを発揮しやすい環境はつくれたとは思います。今回、元木さんに進行役を任せられる場面が多かったので、私は一歩踏み込んで会話に参加したり、同じ目線で近くにいることができました。自分オリジナルの理念の文案を作ったりもしましたね。そんなふうに、私たちが、「ああでもない、こうでもない」と一緒に考えていたのは、きっとハウスギャバンの皆さんにとっても心強くはあったと思います。クライアントと業者みたいな関係性をうまく崩せたのかもしれません。もちろんあくまでもクライアントですが、それだけじゃないというところは私たちの雰囲気や関わりとして結構つくれたんじゃないかなと思います。

柳瀨:そうですね。その関係性の温度感はすごく感じました。もちろんこちら側だけじゃなくて、ハウスギャバンさん側にもあって、両方にあってこそだと思います。本当に、感動しました。

元木:こういった良い雰囲気をつくれたのは、身体をつくっていくプロセスが重要だったと思います。最初はやはり身体は緊張しているし、ハウスの人はハウスの服を着て、ギャバンの人はギャバンの服を着ているという状況で。そこから統合した会社の理念をつくっていくには、この人たちが自分の言葉でつくれない限りそれは絵に描いた餅になってしまう。もしくは「いいのができたな」だけで終わってしまうかもしれません。そこに、自社とはまた違った視点から、絶対にいい会社になるよという思いで一緒に考えてくれる人がいて、「すごくいいですね」とか「とはいえこういう視点もありますよ」と多少のユーモアや遊び心もまじえてお伝えしていく。そういう場づくりを私たちは得意としていますし、思いをもってやりきれたのかなと思います。

飯田:さっきのサッカーのメタファーは、言葉を変えるとクラブチームの選手から代表の選手になるプロセスでもありますね。個人のアイデンティティは、自分のキャリアみたいなレベルで普段は取り組んでいるけど、代表になったらそれとは違うアイデンティティに変化しなくてはいけない。代表選手になったら代表のユニフォームを着るけれど、ユニフォームを着たらそれだけで代表選手になれるわけではない。合宿や議論を重ねたり、さらにチームビルディングもするし、試合で悔しい負け方をしたりもするでしょう。そのようないろいろな悲喜こもごもありながら、代表選手としてのプライドや大舞台で活躍できる心の持ちようのようなものをつくりあげた人が、最終的に活躍する。今回の取り組みは、いわば代表合宿みたいな位置づけで、身体をつくって、心もつくって、そして本気で試合に臨んでというようなプロセスでした。

元木:お互いの化学反応は間違いなくありましたが、そのうえで柳瀨さんの関わりはすごく多面的だったと思っています。柳瀨さんがひとりの参加者として場にはいって、場の真ん中に言葉のボールを投げる行為は、エネルギーとして大きな影響がありました。そこから、みんながちょっとずつ、自分の大事なことを話し始めたことが、アウトプットにとっては相当に重要だったと思います。

飯田:それを聞いて今思い出した場面は、柳瀬さんに対してプロジェクトメンバーの皆さんがこんな理念案を作成してほしいというプレゼンテーションをして、それを柳瀨さんが受けとめる回ですね。「はいわかりました」と言って、ただオーダーを受け取ってもいいのに、「そもそも」的な濃密な議論がここでも繰り広げられました。もちろんハウスギャバンの皆さんも模造紙などにしっかり書いてまとめて準備万端な状態で臨んでいましたが、準備と本番ではまた違って、柳瀨さんに質問されたらその場で「うーんこうかな、こうかな」みたいな感じで話していたのは、すごく掘り下げられるプロセスでした。議論って、論点が深まっていなかったり、ずれていたり、もやもやすることがよくあると思うんですけど、このときは私自身、観客になったような感覚で聞けて、とても面白かったです。前のプロセスから参加してくれていたからなおさら、問いが的確な印象もありましたね。

柳瀨:私もそんな現場が好きです。私の役割は、最後に言葉にするところがメインではありつつ、サッカーの例でしつこく言うと、シュートのところだけで決めてくださいっていうのはちょっと難しくて。その前に、何度も何度もディフェンスラインとやりあっているから綺麗に抜け出せたと思います。「何を言いたいか」が先にあってそれを「どう表現するか」は後にでてきますが、「何を言いたいか」が不透明だとやり直しになってしまったりします。みんなで信じられるプロセスがうまくつくれたことが、何よりやりやすかったですね。
あと印象的だったのは、文案を最終的にまとめていくオンラインミーティングの時でしたが、最後は、ひらがなにするか漢字にするか、読点をどうするかのような、普段ならそこまで精緻には考えられていないようなことが見えてきて、見えていなかった世界が見えてくるというのは、このプロジェクトをやる大きな意味だと思いました。

元木:感覚が研ぎ澄まされていくっていう感じがすごくありましたね。そういった繊細な言葉が、参加者の内面から、声として、しかもオンラインであるにもかかわらずどんどん重なっていくのをみて、一緒にこの場を作れて良かったなと思いましたし、皆さんのポテンシャルも含めて、全部いい形で掛け合わさった場でしたね。

飯田:今の話で思い出したんですけど、役員向けの最終報告会に同席させてもらった際、社長の生駒さんが「ここの表現はどうなんだ?」と厳しめなトーンで問いかける場面があって。それに対してなかなかうまく答えられないシチュエーションもありつつ、最終的にはあるメンバーがクリアに回答して、「よしわかった!これでいこう!」となりました。あのやりとり、生駒さんはきっと嬉しかったんじゃないかなと私は思っています。終わった後の懇親会のときには社員が成長したことに対してありがとうと言っていただいたし、後日頂いたお礼の手紙でも、社員がプロジェクトを通じて成長してくれたことに対する感謝の言葉がつづられていました。私は、正直に言うと、良い理念を作ろう、そのために良いプロジェクトを、良いチームを作ろうということにはコミットしていましたが、メンバーの皆さんを成長させようという明確な意図をもっていたわけではなかったです。それでも社長の生駒さんがひときわ喜んでくれたのはメンバーの成長に対してだったように思えましたが、皆さんはどう感じましたか。

柳瀨:成長って「考えたことないことを考えること」だと思うんです。フィロソフィーをつくること自体、考えたこともなかったでしょうし、その中にあるいろんなステップも考えたことはなかったはずです。商品開発や営業、生産など、日々向き合っている課題とは全然違うことを問われて、それに対してひとりの人として向き合って応答するしかない。あれだけの人数がいたら誰かに任せて楽をすることもできたけど、誰も逃げなかった。そこはやっぱり、ワークショップのプログラムがすごく良くて、みんなで考えられたということでしょうか。

元木:強いて言えば、皆さんの変化と成長を支えることをやりきった感覚はあります。いろんな困難や壁にぶつかるんですけど、その心を支えよう、のような。たとえば場が揺らぐようなことが起こった時に、「今まではこういう話をしていましたよね」ってちゃんと伝えてあげたり、毎回やってきたことを丁寧に伝えたりということです。支えることをやりきったからこそ、障害をちゃんと乗り越えてくれたと思います。あくまで、手伝ってはいないし、引っ張りあげもしなかったです。

飯田:それはネガティブケイパビリティの話なのかもしれませんね。タックマンモデルでは、チームが軌道に乗る前には混沌期というカオスの期間があるといいますが、今回のチームも、最初の儀礼的にフレンドリーな期間を過ぎた後にカオスの期間があって、そのカオス期は私たちもゆっくりやっているものだから、「このままで本当にできるんだろうか」という不安がみんなの中にとてもあったと思います。でも私たちはそれに対して「カオスは必ず起こるものだし、今は正しい道を歩んでいるから不安に思う必要はないよ」ということを、言葉だけじゃなくて、全く大丈夫ですよという態度も示していましたね。まあ、不安が全くなかったというのはやや大げさですけどね。多少の波乱はありつつも、大丈夫だよ、心配してないよといっていたのが、引き上げているではなくて、ホールドしている状態といえるのかなと。結果、胆力がついたといえるのかもしれないです。それこそネガティブケイパビリティという、答えが出ない不確かなところでも、安直に答えを出そうとしない態度は大切な能力といっていいと思うんですけど、それを実地で試していただけました。
さらに、普段とは異なる、会社全体の視座でものを語るっていうことが本当に堂々とできたし、もちろん成果がついてきたからこそ自信がついたのも確かだし、いろんなものがうまく結びついたんだろうなって思います。
もうひとつ、ワークショップの初期にはどちらかというと主張の少なかったメンバーが、最終的にここぞというときに大事なキーワードを紡いでいましたね。

元木:大事なのは言葉の数ではなかったと、改めて思います。見た目にはそんなに現れない力強い変化が彼らのなかであって、それがアウトプットにも影響を及ぼしていたと思います。だからここに参加した人は、全員が必要な人だったし、適任でした。

柳瀨:フィロソフィーは、やっぱりその集団がまとまるのに大事なものだと思いますし、人間ってそれを使いこなしてここまで進化してきているところがあります。ライフラインのような社会にとって大事なもので、これだけ情報が多くなった時代にそれをつくるのは特別なことです。あらゆる情報が入ってくる今の時代に自分が信じられるものをつくるのは実はすごく難しい。そんなフィクションをみんなで信じていくっていうのは、人間の能力をフルで発揮してこそやれるものだと思います。
このチームでもし次にチャンスがあればトライしてみたいと思っているのは、事業の実業的な政策と連動して、それを実際に進めていくために必要な自分たちが信じるフィロソフィーを考えることです。その両軸を一緒に考えて、フィロソフィーが事業を応援してくれるような形にできると良いなと思っています。

飯田:やりたいですね、そういう仕事。
私、このプロジェクトの企画提案のプレゼンテーションのときに「ちゃんと役に立つ理念を作りましょう」という話をしていたんです。理念って、言葉だけだと正直なところ空虚というか、良いことを言っているけど実情が伴っていないと「そんなものは意味ないよね」というネガティブな意味すら帯びる、非常に危ないものだなと思っています。会社・組織には固有の目的があって、そこにかかっている色々な人の生活とか、つくっている様々な価値があるなかで、そんな組織の理念づくりを通して私たちがお金をいただいている以上は、理念がちゃんと仕事に役立つこと、たとえばビジネスの成長が組織にとって大事なのであればそれに寄与すること、抽象的なものだからこそそこにはこだわり抜きたいという気持ちは強くありました。
今回のハウスギャバンの理念が、ちゃんと役に立ったといえるかどうかは、まだ歴史の評価が必要なので、達成しましたというのは今はまだおこがましいですが、そんな仕事をしたいという視座でスタートしたのは間違いないですし、そのために今回の元木さんや柳瀨さんを巻き込んだチームを組成したのは間違いないです。そのことを、今日の会話をつうじて、改めて再認識しました。

鼎談したメンバー

  • 飯田 一弘
    ディレクター

  • 元木 一喜
    ファシリテーター

  • 柳瀨 武彦
    コピーライター​​

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