実施概要
事業名
農泊地域における企業の社外活動実証業務
実施日
2024年1月30-31日、2月14-15日
実施内容
- 企業研修ニーズについての理解を深めるワークショップの開催
- 企業の様々な課題・関心に沿った体験プログラムや滞在プラン造成に向けた受入地域伴走支援
- 磨き上げた体験プログラムや滞在プランを取り入れたモニターツアーの実施
- 受入地域と企業との関わり創出
- プロモーション素材制作
スケジュール概要
本レポートでは、企業の社外活動の場として、新潟県の農山漁村地域の活用推進を図る「農泊地域における企業の社外活動実証業務」後半2日間(2024年2月14-15日)の様子をお届けします。
Day1-2のレポートはこちら
Day3
プログラム準備
“研修設計”という学びを形にし、地域と共に新しいプログラムを生み出すことを目的とした本事業。Day3では、これまでオンラインにて交流を深めてきた参加者の方々がついに妙高市に集いました。この日はDay4のプログラム実施に向け、Day1-2にて学び・検討した内容について妙高市の地域プレイヤーの方々と最終確認を行うとともに、懇親会として地域と民間企業の人事部や研修担当者(以下、企業人事)を含めた異業種の交流会を開催いたしました。
Day3目標
- ①企画したプログラムについて現地で最終確認を行う
- ②地域プレイヤーや企業人事同士との関係を深める
昼食交流会
正午に上越妙高駅に到着した3名(*他1名は私用によりDay4から参加)の参加者は、新潟県農林水産部地域農政推進課及び(一社)妙高市グリーン・ツーリズム推進協議会(以下、妙高GT協会)の方々に迎えられ、「集いの家和み」にて昼食を兼ねた交流会を行いました。妙高の山々に囲まれた自然豊かな場所で手打ち蕎麦や今年初めて収穫されたふきのとうの天ぷら等、妙高周辺で収穫された食材をふんだんに使用した料理に舌鼓を打ちながら、無事に妙高市にて対面できたことを喜び合いました。
午後概要
午後からはファシリテーターの重田(ミテモ株式会社)より2日間のスケジュールについて説明後、それぞれプログラムを共に実施いただく地域プレイヤーの生井一広さん(ナマイキカク)、福島脩太さん(妙高市役所環境生活課鳥獣対策専門員)とオンラインで構築したプログラムの実施に向け、現地における最終確認を行いました。
プログラムは「”妙高にまた家族で訪れたくなる”親子ワーケーション」を目的に、2チームがそれぞれ行動目標を設定し企画しました。実施当日がよりよいものとなるよう参加者の方々は熱心に地域プレイヤーとコミュニケーションを取り、内容を詰めていました。
プログラム①
- テーマ:ジビエから学ぶ自然の営み
- 地域プレイヤー:福島脩太さん
- 行動目標:「子供が“妙高にまた連れて行って”と言う」
(「循環型社会」の体験を通じた意識醸成)
プログラム②
- テーマ:自然な暮らしを体験する
- 地域プレイヤー:生井一広さん
- 行動目標:「子どもも大人も五感を研ぎ澄ます時間にする」
(子どもも大人も普段とは違う「脳」で挑戦する機会提供)
懇親会
内容確認後は、それぞれ振り返りを行い翌日のプログラム実施に備えた最終調整を行いました。その後、宿泊するロッジ遊山にて懇親会が開催され、和やかな雰囲気の中、業種の異なる分野で活躍する地域と企業人事の交流が図られました。この会には「これからの働き方や組織づくり」の専門家であり、妙高市在住の竹内義晴さん(特定非営利活動法人しごとのみらい理事長兼サイボウズ株式会社)も参加され、非常に有意義な時間となりました。
翌日はいよいよプログラム本番。それぞれのチームが企画したプログラムを体験し合うことで、自らが設計したプログラムから得られる学びや気づきを体感していきます。
Day4
プログラム実践
妙高市に県外からの交流人口を持続的に誘致することを目指す本事業において、2チームが設計したプログラムの共通目的は「”妙高にまた家族で訪れたくなる”親子ワーケーション」。エコツーリズムを通した循環意識醸成を目指し、受け入れ先の妙高GT協会の方々と妙高市で活躍する地域プレイヤーの協力の下、プログラムを実施しました。 2チームが企画したプログラムをそれぞれ午前・午後に体験し合い、実際に効果を検証していきます。
Day4目標
- ①参加者:実際に企画したプログラムを自分自身で体験する
妙高GT協会:プログラムの受入を試行する - ②企画したプログラムを振り返り効果検証を行う
【午前】プログラム①:ジビエから学ぶ自然の営み
このプログラムの行動目標は、”子どもも大人も五感を研ぎ澄ます時間にする”こと。福島脩太さん(妙高市役所環境生活課鳥獣対策専門員)より、フィールドサイン(足跡や食痕・糞等、野外で見られる動物の痕跡)についての基礎を座学で学んだ後、実際に山/雪原を探索し、私達の生活と共存する動物達の跡を追いかけました。
最近は暖かく、太陽で雪上のフィールドサインが見えにくいかもしれないとのことでしたが、この日は運良くたくさんのフィールドサインを見つけることができました。参加者の方々は、広大な山/雪原を歩き回り、足跡や糞、食べかけの木の実を見つけては「福島さんこれはどんなサインですか~!?」と声をかける様子が見られました。
福島さんはイノシシ・シカ・サル等野生鳥獣による農作物被害防止の一環として、妙高周辺に生息するサルの群れを管理しています。福島さんの個数調整を行う際のエピソードや「心苦しいが、人と野生動物が共存していくために必要なこと」という想いを伺い、日常がこのようにして守られていることを実感しました。
福島さんの狩猟の経験を交えながら、生態系について、命の大切さについて学んだ後は、実際に福島さんが狩猟した真鴨を使った鴨汁うどんをいただきました。今回いただいた真鴨は、渡り鳥で長距離を飛ぶ種類であるため筋肉が発達した良質な赤身とのこと。実際に食する鴨についての知識を深めてからいただくお肉は、非常に有難く感じました。
命のありがたみを五感で感じ、ジビエプログラムは終了。普段お肉をいただくまでの過程である動物たちの生活や狩猟方法について、五感でダイレクトに感じることができました。
また山/雪原を歩く際には、かんじき(雪の上を歩きやすくするための民具)を着用し、雪国での伝統の暮らしも体験することができました。「子供絶対喜ぶよね〜」というような声も上がる中、大人達自身が無邪気に雪原をズボズボと歩く姿が見られ、親子で楽しめるプログラムとなりました。
【午後】プログラム②:自然な暮らしを体験する
このプログラムの行動目標は、子供が“妙高にまた連れて行って”と言うこと。自然農法で農業を営みながら山間地の農村で暮らす生井一広さん(ナマイキカク)の築140年を超えるご自宅を訪問し「循環型社会」の体験を通じた意識醸成を目指します。
生井さんの出身は埼玉県。国際自然環境アウトドア専門学校を卒業後、「昔ながらの伝統を守りながら、田んぼをやっているじいさん達がかっこよかった」と妙高市に移住し、無農薬無肥料の自然農法で生物の多様性を保ちながら農業を営まれております。
プログラムのはじめは、生井さんから古民家の歴史や修繕の過程についてご自宅を見学しながらお話を伺いました。
「民家は特別なものじゃない。代々受け継がれてきたもの。生活の中で柱や床が壊れたら材料を周囲から集めて修繕する。歴史あるものを文化財として保護・鑑賞するのではなく、活用することで後世に受け継いでいきたい。自分の足元を見て生活することが、人間の自立にも繋がっていくと思う。」という生井さんのお話から、何でも簡単に手に入り、何気なく消費することに慣れた生活を改めて考えさせられます。
続いては、ちまき・きなこづくりを行いました。普段スーパーで簡単に買えてしまうものですが、地域のものを使用し自分たちで作ることで、資源のありがたさ・一からものを作る楽しさを実感しました。
ちまきを茹でている間は、生井さんのご自宅周辺で取れた胡桃を割って出た油を使い、古民家の床や柱磨きを行いました。実際に手入れをすることで、より建物に愛着を感じ、ものを大切にする心が育まれます。
その後は、生井さんの田んぼの散策を行い、生物の多様性を重んじ、手植え・手刈り・天日干しと機械や肥料を使わずに行うこだわりの農法や季節によって変わる田んぼの風景についてのお話を伺いました。
時折「冬でも生き物いるかな!?」と少年のように田んぼの中を覗き込む好奇心旺盛な参加者の方もいらっしゃいました。
たくさん体を動かした後は、いよいよちまきの実食。合わせて生井さんお手製の干し柿やあんこ、漬物等に舌鼓を打ち、参加者の方々も自然と笑みが溢れていました。
自然の恵みに感謝をしながらプログラムは終了しました。
周囲にあるものを活用した生井さんの暮らしを体験し、循環型社会への意識が高まったとともに大人も子供も好奇心をくすぐられる充実した時間となりました。
振り返り
プログラム終了後は、参加者自らが立てた目標に対して、どのような結果が得られたのかを体験を元にリフレクションを行いました。
研修設計ワークショップのゴール
- ①前年踏襲ではない研修の設計について考えることができるようになること
- ②設定した目標に受講生が到達し、現場へと研修の内容が継続して
生かされるための研修デザインをできるようになること
参加者の方々は、改めて今回の研修設計ワークショップのゴールを振り返り、この体験を自社でどう活かしていくか互いに議論を深めていました。
まとめ
計4日間の本事業を通して、異業種かつ異なる地域の企業と妙高市の方々が交流を深めることができました。事業後に参加者に行ったアンケートでは「妙高市にまた訪れたいか」という問いに、参加者4名中4名が「ぜひまた訪れたい」と回答。妙高市の当事者人口が増え、持続的に県外から妙高市に人が訪れる期待が持てる結果となりました。地域プレイヤーの方々にとっても、様々な企業の方との出会いが改めて自身の活動を振り返る機会となったり、新たな取り組みへの意欲が沸くきっかけとなったようです。
最後に、本事業に参加されたモニターの方々のお声を一部ご紹介します。
- ・プログラムの設計者と参加者の二軸を体験出来る貴重な機会をありがとうございました! 新しく知った地域、人とこれからも繋がり続けたいなと思います。 日本を混ぜこぜに良い未来を作っていきたいです☺
- ・オンラインでの研修中の学びがこう形になっていくんだという実感を得られたこと、またリアルで会うことで参加者同士の会話でも研修の内容を振り返ることができ、とてもよかったです。 オンラインだけでは、自己満足で終わっていたかもしれない中で、「妙高に行って作るぞ」という意気込みがより記憶に定着させてくれました。
おわりに
本事業を終え、妙高市における企業の社外活動の場としての活用の可能性を見い出せることができました。今回のプログラムのテーマは「親子ワーケーション」でしたが、今後は様々なテーマでプログラムを広げていけるのではと考えています。本事業にご参加くださった皆様、並びにご協力くださった皆様、どうもありがとうございました。
主催・協力
- 主催:新潟県農林水産部地域農政推進課、ミテモ株式会社
- 協力:(一社)妙高市グリーン・ツーリズム推進協議会
お問合せ
cue @mitemo.co.jp
ミテモ株式会社