多様な関わり方が求められる時代に
都市と地域、2つの場所を行き来しながら暮らす「二地域居住」。このライフスタイルは、働き方や住まい方の多様化を支えるだけでなく、地域の担い手不足や人口減少といった課題に対する新たなアプローチとして注目されています。
ミテモでは、制度ありきではなく、人と地域の間に「意味のある関係性」が育つプロセスを大切にしながら、各地の自治体・地域団体と二地域居住の取り組みを進めています。
二地域居住とは
二地域居住とは、都市部に住みながら地方にもう一つの拠点(住宅や宿泊施設など)を持ち、定期的に行き来する暮らし方です。コロナ禍以降リモートワークなど柔軟な働き方が一般化する中で、地域に拠点を持つ「関わりしろ(関わる余地)」を探す人が増え、制度化の動きも進んでいます。
国土交通省では2024年に法改正を行い、次のような支援制度を整備しました。
- 市町村による「特定居住促進計画」の策定が可能に
- 民間企業・NPO等を「二地域居住等支援法人」として指定、官民連携を促進
- 住宅・コワーキング施設・生活サービスなどの拠点整備への支援が拡充
こうした政策的な後押しが進む一方で、実際に暮らす・働くためには、制度面だけでなく以下のような中長期的な課題への対応が求められています。
- 移動や滞在にかかる費用負担の大きさ(交通費・宿泊費・通信インフラなど)
- 地域での暮らしを支える生活インフラの未整備(交通、買い物、医療、教育、子育てなど)
- 納税や住民票など、制度上の扱いの不明確さ
制度の整備が進む中、それを活かして人が安心して関わり続けられる生活環境と、地域として受け入れ・支える体制の構築が求められています。
二地域居住者は、地域の担い手としてだけでなく、地域にない経験やナレッジを持ち込むことで、地域経済や社会に新たな価値をもたらす変革者としての役割も期待されています。
ミテモが考える「二地域居住」
ミテモでは、制度導入や拠点整備といった“点”ではなく、地域と人との関係がどのようにつながり、育っていくかを重視しています。二地域居住を「人を呼び込む仕組み」としてではなく、「地域が変化していくプロセス」として捉え、対話と実践を通じて伴走的な支援を行っています。
たとえば、ミテモがご支援する多くの地域では、まず「観光」「副業」「学び」などをきっかけに関係人口が生まれ、そこから何度も通いながら“関係性”が育まれていきます。
この過程で、人が地域に関わり続ける意味や、地域側の受け入れ環境を持続可能に整えていく必要があります。
私たちはこうした一連の流れを、以下のような視点から設計・支援しています。
- 関係人口 → 継続的な関わり → 二地域居住 → 定着というステップを前提とした支援設計
- 制度導入前からの体制整備や対話の場づくりに注力し、地域内外のステークホルダーが自然につながる関係をつくる
- 空き家・仕事・拠点などを、単体ではなく“関係性の接点”として再構成するプロセス支援
このように培われた関係性があってこそ、制度の活用や計画策定も意味を持ちます。
ミテモでは、制度ありきではなく、人と地域の間に芽生えた関係性を起点に、持続的な取り組みへと展開することを支援の軸としています。
この姿勢を体現する取り組みのひとつが、長野県塩尻市の「スナバ」です。
事例紹介:塩尻市「スナバ」での取り組み
長野県塩尻市では、コワーキング・アクセラレーター・ラボの3機能を備えた「シビック・イノベーション拠点スナバ」を中心に、都市と地域の人材が学び合い、協働する環境が生まれています。ミテモはスナバの立ち上げ期より、企画や運営支援、経営アドバイザーなど様々な形で関わってきました。
スナバは、「生きたいまちを、共に創る」というビジョンをもとに、自分自身の課題や、実現したい思いを起点としたシビックイノベーターを増やすことをミッションとしています。
次のような点で、スナバは高い評価を得ています。
- ビジョン共感を起点とした参加設計:スナバビジョンへの共感を基盤に、自らが地域で実現したいことを描くプロセスを重視し、コミュニティの自律的な形成を促進。
- 偶発的な対話と協働を促す空間設計:オープンキッチンや場の設えなど、自然な交流が生まれる設計により、プロジェクトの種が芽吹く環境を醸成。
- 実践者が共に育つ環境:スタッフとメンバーが対等な立場で関わり、アイデアの実現を日常的に伴走。
スナバでは、一人ひとりの課題意識や欲求を起点とし、生活の質の向上や地域課題の解決を目的とした多様なプロジェクトが生まれており、その数は40件を超えます。
「アイマニSHIOJIRI」(駅構内のカフェ&バー)や「ハタケホットケ」(スマート農業)、「大門マルシェ」やクラフトビール事業「ナイアガラホップ」など、単なる経済活動にとどまらず、地域に根ざした実践的な取り組みが次々と立ち上がっています。
「スナバを拠点に活動した地域おこし協力隊13名全員が任期終了後も地域に定着するなど(2024年現在)、関わり続けられる仕組みが成果として現れており、こうした二地域居住者や移住者がイノベーターとして地域に根づくことで、塩尻市では地域経済の好循環も生まれています。
その他地域での取り組み
三条市(新潟県)
- 地域ビジョンとプラットフォームの構築に向けた調査を実施予定(2025年度上期)
燕三条地域における二地域居住の現状を調査し、「Local Innovation Platform」の将来像を検討。 - 「イノベーター育成プログラム」による先導的実証を実施予定(2025年度下期)
二地域居住希望者向けに教育・交流プログラムを提供し、地域における役割創出と人材流動を促進。 - 交通や宿泊面での支援策も検討
新幹線利用促進や地域メリットの可視化を通じて、効果的な定着施策の設計を目指しています。
王寺町(奈良県)
- 「森林文化×起業」をテーマに文化資本を活かした事業開発を推進
陽楽の森を中核拠点とし、副業・起業支援やアクセラレーションプログラムを展開。 - 段階的な二地域居住に向けたお試し拠点や制度整備を実施
体験居住スペースの整備や「ふるさと住民票(仮)」制度により、移住前の中間ステップを提供。 - 国の制度を活用し、「特定居住促進計画」の策定に向けた支援を実施
交通費支援や重点地区指定など、地域に応じた制度的後押しの検討を進めています
地域に根づかせるには“伴走者”が必要です
- 制度の活用を検討しているが、進め方がわからない
- 他地域の事例を参考に、自分たちに合った取り組み方を探したい
- 構想段階から、制度設計・実施まで一貫した支援を求めている
ミテモでは、こうしたご相談に対して、制度の有無に関係なく、地域の状況に応じた柔軟なサポートを提供しています。まずは一度、私たちにお話をお聞かせください。