アニメーション制作現場で戦える“タフな人材”を発掘したい!新卒採用のグループワークで学生の本当の姿を引き出す方法 - ミテモ株式会社

アニメーション制作現場で戦える“タフな人材”を発掘したい!新卒採用のグループワークで学生の本当の姿を引き出す方法

  • {{tag.name}}

  • {{tag.name}}

  • {{tag.name}}

  • {{tag.name}}

ミテモはさまざまな企業への研修の実施や、研修教材の制作などを数多く手掛けている。研修の実施においては、インストラクショナルデザインの代表的なプロセスモデルであるADDIEモデル*1をベースに、研修を企画するための現状分析、それをもとにした設計、開発、実施、その後の評価を行っており、そこで培ってきたノウハウを生かして、採用の支援も手掛けている。

今回は2015年4月にアニメーション制作会社の サンライズ(現バンダイナムコフィルムワークス)からキッズファミリー層向けを中心に分社化され、今では、グローバルに愛されるアニメーション作りに取り組む株式会社バンダイナムコピクチャーズの採用グループワークの設計と実施の支援を行った。

1:ADDIEモデルとは、学習の目標を達成するために必要な学習活動を分析・設計・開発・実施・評価の5つのフェーズとして定義したモデル

ケーススタディ概要

ケース

株式会社バンダイナムコピクチャーズ 採用志望の学生たち

目標

1.会社が求めるコンピテンシーを持つ人材の選抜
2.学生たちの入社に向けての動機の強化

提供したサービス

・採用戦略に合わせた採用グループワークの設計支援
・当日のファシリテーターの派遣
・ストップアニメーション作りに必要な機材の提供

株式会社バンダイナムコピクチャーズ(以下BNP)では2019年から新卒採用の現場にミテモのグループワークを導入。このグループワークに参加した学生たちは1グループ4〜5人でコマ撮りのストップモーションアニメを制作し、選考官はその制作過程の中で、学生が会社の求める人材かどうかを判断する。
実は本来このグループワークは、採用のために開発したものではなかった。「組織の生産性を高める」ことを目的としたグループワーク開発中に代表取締役社長(ワークショップ参加時はプロデューサー)佐藤弘幸さんが体験者として参加。佐藤さんは、このグループワークはBNPの採用方法に最適だと感じ、導入を決定。ミテモはグループワークの設計から、当日の運営、ツール支援、ファシリテーションを担当した。

「アニメ制作会社だから、採用でアニメを作ってみる。」一見アニメ会社であれば当たり前のように感じる採用方法だが、このグループワーク通して見つけたかったことは、学生のアニメ制作の能力や才能ではない。アニメが好きという強い志望動機を持った学生たちの”本当の姿”を引き出すことが、今回の目的だったそうだ。本来学生にとっては緊張し、負荷のかかる採用の場で、どのようにして”本当の姿”を引き出すのか。採用を担当する川原さん、秋田さんに伺った。

アニメ制作は、チームでものづくりをする現場

――まず、BNPがどんな会社か紹介いただけますでしょうか。

秋田さん:BNPはアニメーションの制作会社です。オリジナル作品のほか、原作がある作品のアニメーション化や、作品と連動したイベントなど、幅広く事業展開も行っています。また、将来的には海外向け作品やトイマーチャンダイジング作品の開発、XRなどにもチャレンジしていきたいと考えています。
『アイカツ!』 『もっと!まじめにふまじめ かいけつゾロリ』などの子供向け作品から、『TIGER & BUNNY』など大人が楽しめる作品まで、これまで色々な方が楽しめるアニメを制作してきたからこそ、”人の楽しませ方”の幅を広げることにチャレンジしながら企画・制作・事業を一気通貫して行っています。

左:秋田さん 右:川原さん

――アニメ制作会社となると、やはり入社される学生は専門スキルを持った方ばかりですか?

川原さん:いいえ、そんなことはありません。もちろん応募段階で、アニメ専門学校を卒業して専門スキルを持った方もいますが、アニメ制作が未経験の方が多いですね。
BNPではアニメ企画・制作・事業と幅広い業務があるので、アニメの制作希望者だけでなく、事業に携わりたいという方もいます。アニメ制作会社だから絵が描けないといけない、という勘違いされがちですが実はそんなことは全然ないんです。

――制作希望だけでなく、事業に携わることを希望する学生もいる中で、なぜ、ミテモの「ストップモーションアニメを作るグループワーク」を採用に導入しようと考えたのでしょうか?

秋田さん:もちろん他の事業展開もしていますが「アニメを作る」ということはこの会社の基本的な業務です。そして、そのアニメ制作は共同作業になります。アニメが好きという熱意があるだけでなく、集団でモノづくりができる適性を持っているかを判断するには、実際にアニメを作ってもらうのが一番良いのでは、と思ったことが導入のきっかけです。

川原さん:本当なら、アニメーションの現場に直接入ってもらってその様子を見ることができればいいのですが。採用段階では候補者全員に現場に直接入ってもらうのは無理ですからね。

――やはり今までの面接方式では、適性を持った人を見つけることは困難でしたか?

秋田さん:そうですね。面接で自己PRが上手な学生はいますが、一方で面接という場に緊張してしまって自身の魅力を伝えきれない学生もいました。エントリーシートや短時間の面接だけでは、そのような適性を見抜くことは難しいと感じていました。

川原さん:アニメ制作の現場の状況は日々変化します。そしてその変化に対応し、自分で考え、自分で行動できる能力を測るためにはどうしたらいいのだろうと悩んでいました。

――なるほど。自発的に行動できる学生をどう発見するか、ということが課題だったんですね。

秋田さん:はい。アニメ制作の現場は新人だからと言って、全て面倒を見てもらうという受け身の姿勢では成り立ちません。特にTVアニメシリーズは毎週〆切に追われるので、ただ指示を待つだけでなく、自ら周りを巻き込みながら進める瞬発力など、戦力のベースとなる力が必要になってきます。

川原さん:〆切などの制限の中でも、チームとして良い成果を出し続けることが求められる世界です。精神的な”タフさ”も必要だと思っています。

「好きだから」だけでは乗り越えられない壁

――アニメ制作の人材に必要な”タフさ”とはどんなものですか?

秋田さん:アニメ制作の現場には自分とは異なる人たちが沢山います。部署や役割が違うのはもちろん、フリーランスの方や国籍が違う方。どんな人とでも臆さずに自ら積極的にコミュケーションが取れる力でしょうか。また、アニメ完成までに多くの制限や壁にぶつかりますが、それはいつも準備できないまま突然やってきます。限られた時間・リソースの中で臨機応変な対応ができ、その対応を継続できるタフさが必要だと思っています。

川原さん:そういったタフさがないと、業務を続けていても、自分がやりたいことの方向性を見失ったり、才能があったとしても立ち行かなくなったりしてしまうんです。面接で自己PRが上手くいっても、その適性がなくて結局入社したあと苦しんでしまう。そんな学生も少なからずいました。

――面接での自己PRが上手くても、適性が無いと結局は入社後に辛くなってしまうんですね。
今回導入したグループワークでは、学生の適性を見抜くことができたと感じますか?

秋田さん:アニメ制作現場では色々な役割がありますが、グループワークで「自分はこの役割をしよう」と学生が自発的に決めていく姿勢が見られたのはとても良かったと思っています。

川原さん:そうですね。面接では見られない学生の“本当の姿”が見られたと思っています。

――学生の本当の姿とは?

川原さん:選考官がテーブルの近くに来ると、「自分をよく見せたい」と意識してしまう学生もいました。もちろん選考の場ですから、そう思うことは当然だと思います。ですが、制限時間内でアニメを完成させないといけないとなると、最後の方はみんな素の表情が出てくるんです。

――選考の場なのに、選考する人を意識しなくなるんですね。

川原さん:はい。最終的には「選考官の目なんて気にしていられない!作らないと完成しない!」というように、学生のありのままの姿を見せてくれるようになりました。これは面接用に用意された言葉では、わからない一面ですね。

秋田さん:そういう状況だと、学生の性格もわかるようになったのは発見でした。例えば、リーダー気質ではなさそうな学生がチーム内で意見が割れた時に、「じゃあ、こうしよう」と具体的にアイディアを出してまとめることが上手なことも。面接だけでは取りこぼしてしまう人材がいたことに気づきました。

川原さん:面接で受けた印象と、グループワークを通じて感じた印象が違う学生はいます。面接という手法では発掘できなかったり、本当は適性があるのに学生が緊張してしまってそれを見抜けなかったり。そんなグループワークだからこそ発掘できた学生はいます。

――このグループワークで何か他に発見はありましたか?

秋田さん:選考官には佐藤社長、事業部から1名、制作部から1名、人事部から私たちに加え1名が参加しましたが、各々「採用に対する視野が広がった」という意見があがりました。
それぞれの部署の発想で学生を見るので、採用後の配属のイメージも具体的に持つことができました。
また、学生に対する制作業務についての理解を深めるということもグループワークを通じて行えたように感じます。

会社のことを理解し、好きになってもらう

――グループワークに参加した学生の反応はいかがでしたか?

秋田さん:最初は「今日は4時間も何をさせられるんだろう?」と緊張した面持ちでしたが、「アニメを実際に作ってもらいます」と伝えた時は、みんなドキドキとワクワクが入り混じったような表情になり、そのあとは楽しそうにリラックスして参加しているように感じました。

――アニメ制作会社でアニメが作れることは、アニメ好きな学生には嬉しいことですよね。

秋田さん:はい、アニメ制作経験が無い学生も多くいるので、アニメ制作会社でアニメが作れるということ自体を喜んでくれたように感じます。

川原さん:ミテモさんにグループワークを設計していただく時に、当社のことを感じられるグループワークにしたいと思い、コマ撮りする素材の中に自社のコンテンツ(フィギュアやぬいぐるみ等)をいれていただきました。自社のアニメが好きで応募してきている学生もいるので、自分達が作るアニメーションに、キャラクターを出演させられるということでとても嬉しそうでした。

実際のワークショップの様子

『 TIGER & BUNNY 』©BNP/T&B2 PARTNERS

――学生にとっては記憶に残る体験になりそうですね。

秋田さん:はい。過去グループワークを体験し、複数社から内定をもらった後に入社した社員で「アニメを実際に作れたのが楽しかった」と覚えている人もいました。

川原さん:我々はエンターテインメントの会社なので、我々が提供する採用グループワークが学生たちにとって1つのエンターテインメントを意識した体験にできたというのもすごく良いことだなと思っています。

――秋田さんは選考官だけでなく、全体の進行管理もご担当されていましたが、ミテモにグループワークをお願いしてみていかがでしたか?

秋田さん:今回のファシリテーターとして入っていただいたミテモの森本さんの進行がとても良かったと感じています。これまでグループワークをやったことがなかったので、慣れている方がいるというのは心強かったです。
もともと「ストップモーションアニメづくり」というグループワークをそのまま導入したので、グループワークで使用するツール(PCやレゴ®ブロック、画用紙など)が既に用意されていたことは助かりました。今回で2回目の採用グループワークで、回を重ねるごとに参加する学生の人数が増えたのですが、人数が増えたときも柔軟に対応いただけました。

川原さん:初年度に依頼した時は、BNPはファミリーキッズ向けのアニメーションを作ることを企業のテーマにしていました。それから2年が経ち、今はグローバルに愛される作品制作にシフトしました。それに合わせて、採用グループワークで取り組んでもらうミッションも変更し、そのミッションを現場でほしい人材像に合わせて一緒に調整していけたところも良かったと思っています。

――グループワークを今後御社内で内製化することもできるかと思いますが…?

川原さん:もちろん、考えなくはないのですが…。ファシリテーションに慣れた方がいるということはアドバンテージだと思っています。また学生の人数が多かったこともあり、全体の進行をおまかせできるのは良いですね。

――選考官はやることが多くて、グループワークの進行をミテモさんにお願いすることで、観察、選考に集中できるというメリットがあります。学生の様子を少しも見落とさないようにとするとグループワークを我々だけでやることに限界があるように感じます。

選考官は空気になって、学生の特性を引き出す

――では最後に、より良い採用を今後も継続するために、今後の展望などはありますか?

秋田さん:今回は自由にアニメを作ってもらったんですが、例えば「20秒のアニメを作る」などの制限を付け加え、その制約の中で学生がどう対応するかなども見られたら、より良いグループワークになるように思えました。

川原さん:グループワークの中にこのような要素を増やすのはどうか、というアイディアは回を重ねるごとにでてきますね。あと、最終的に私たち選考官が”空気”のようになるといいなと思っています。

――空気ですか?

川原さん:はい。学生が選考官のことを気にしなくなり、本当の姿を引き出せる場になればいいなと思っています。採用の現場で、その人の全てを理解することはできませんが、個人の特性を引き出す余地がまだまだあるのかもしれないと感じます。そこは試行錯誤しながら模索していきたいと思っています。

――面接で上手くPRできたとしても、その業界の適性がないと、採用された学生側も会社に入った後で苦しむことになってしまう。そんな学生と会社とのミスマッチをうまないためにも、学生の本当の姿を知る工夫が必要なのですね。

川原さん:はい、アニメーション制作は、本当に何もないところから形を生み出す作業です。なにもないところから完成形をイメージして、人に説明したり、イメージを共有したりすることを日々変化する状況の中で行っていく。その変化についていける人なのかどうかを見極めていけるといいなと思っています。

『 アイカツ! 』©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

森本講師からひとこと

森本 康仁

ミテモ株式会社

子供のころ、夢中になって見ていたアニメですが、まさか自分がアニメの会社の方々と一緒にアニメーションを作るワークショップをできる日が来るとは夢にも思っていませんでした。実際に提供してみると、学生たちが本当に楽しそうにアニメづくりに取り組んでいました。一人の学生からは「採用活動であることを忘れて楽しんでいました」というコメントをもらいました。提供する側も、される側もこれだけ楽しめるアニメ作りという仕事に携わる機会をいただけたことに、心から感謝しています。

関連するサービス

【企業紹介】