地域活性化・地域再生に企業はどう貢献できるのか?~地域共創の実践と課題~ - ミテモ株式会社

地域活性化・地域再生に企業はどう貢献できるのか?~地域共創の実践と課題~

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地域共創の実践と課題

昨今、地域活性化・地域再生の取り組みには地方自治体や行政機関だけでなく、SDGsに対する意識やESG投資などの背景もあり、多くの企業のみなさまも加わりはじめました。これらの活動が一過性に終わらず、地域や社会の活動を解決しながら、経済価値を生み出し続ける。そんな事業が実現するために必要なことは何でしょうか。本レポートでは、これらのテーマの背景にある問題を紐解き、具体的な方法についてご紹介していきます。本レポートでは、セミナーの概要とポイントを抜粋していますので、ぜひアーカイブにて御覧ください。

地方衰退の背景

少子高齢化は日本全体でも大きな問題として取り上げられていますが、地域では特に「生産可能人口 (15歳から64歳)」の減少に着目する必要があります。生産可能人口とは調査上では15歳からを指しますが、現代ではほとんどの方が大学に進学されるので、実際の生産可能人口は更に目減りしていると言えます。

さらに、『住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数の調査』の2002年から2022年の人口減少率を見ると、最も減少率の高い地域では50%以上の人口が減少していました。日本全体を見ると20年間で3~4%ほどの減少率ですが、地方レベルだと20%以上の人口が減少した自治体は463にのぼることがわかりました。そして、人口減少が進む地域の「人口増減率」と「高齢化率」の分布を調べてみると、高齢化率が進んでいる地域ほど人口減少率が高いということも見えてきました。

日本の経済の変化も地域産業に大きく影響しています。第三次産業が発達し、日本全国に広がった一方で第二次産業は減少。さらに産業の拠点が海外へ移ったことによって、地場産業が衰退していったケースも少なくありません。しかし製造業者が減っても、他の産業に受け皿があれば地域の生産人口は減少しません。大阪や名古屋がその例です。しかし実態として地方のサービス産業が雇用の受け皿になっていないという問題があります。

なぜ地方産業は衰退するのか?

同じサービス業であったとしても都市と地方ではその性質に違いがあります。例えばIT企業のような情報サービスを取り扱う企業では、東京や大阪などの都市部に本社を構え、地方にも自社のサービスを広く展開する「都市型サービス業」となっています。このような会社は外需を取ることでき、人件費に対して高付加価値化した結果、高賃金・高所得の循環が生み出されています。

一方で地方のサービス業で代表的なものは福祉サービスです。「地方型サービス業」は需要がどれだけあったとしても内需になるため、中々賃金が上がりづらい傾向にあります。やりがいのある仕事であったとしても、高所得を目指し都市の情報サービス業に人が流れるという結果に繋がりやすいのです。

これらの傾向は福祉サービスにとどまらず、製造業(特に建築土木会社)や、林業・石炭・スキーリゾートなど過去は地域の一大基盤産業と言われていたものにも影響し、衰退の一途をたどっています。

地域の基盤産業が衰退していくと、次に人が都市部に流出します。人口減少と高齢化が進むことで、高齢者向けの内需サービス(福祉サービスなど)が雇用の受け皿になり、外貨獲得低下に繋がる「地域衰退のメカニズム」が進んでしまいます。最終的には、電車やバスなどのインフラの維持が困難になり、より生活がしづらい地域となってしまいます。

取り組むべき3つの柱

生産可能人口を意義のある仕事で地域に呼び込み、人口の維持・増加と若返りを目指し、外貨を獲得できる力を地域に養っていくためには3つの柱が必要だと考えています。 そのキーワードとなるのが「仕事」・「人」・「街」です。

①仕事

これは地域外経済流入を促進できる地場産業の革新と次世代産業育成を行うことを指します。日本において数少ない成長産業である観光産業や、魅力的で持続可能な仕事を地域の中で作っていきます。

②人

ダイバーシティの促進を意識し、その地域で活躍できる人を育てていきます。生産可能人口を国内で奪い合うのではなく、副業や兼業人材の活用を推進することで、社会参加意欲の高い人材が活躍できる場を作っていきます。

③街

ウェルネスな環境についても考える必要があります。現状、全ての地域において次世代への投資が十分になされているとは言えません。教育が魅力的に行える街や心と身体的な充足感を感じられるような街であることが大切です。

企業が「地方創生」に取り組む理由

地方創生の取り組みはここ数年でとても増えています。この5年間で地方創生に関する情報発信量は5倍に増え、ESG投資(脱炭素化など)、SDGsなど、標語を掲げるだけでなく、投資家を巻き込む取り組みも増えています。金融機関・上場企業に開示請求を求めていくなどファイナンス面からの働きかけもあり、企業は10年前では考えられないほど地方創生に取り組んでいます。

ただ一方で従来型のCSR活動との違いを作れないでいる企業も少なくありません。従来型の活動は企業にとっては「コスト」であり、持続可能的な活動ではありません。社会課題解決の取り組みそのものが、マイナスをゼロに戻す従来のCSR活動とは異なり、企業の「成長戦略」であると示すことが強く求められています。そのため、本業や実業を通した持続可能な活動が地方再生や社会課題解決につながる形が必要となっています。

好循環を生むための「地域共創型事業」

私たちは、地方活性化・地方再生のために地域と共創するという形で支援を行っています。「誰か」ではなく「地域の方」が思う未来を実現し、連携・協業することで持続可能な事業を創っていきます。そのために、まずその地域の中にいるプレイヤーに学びの機会を提供し、地域の外にいる人たちと共に創る、広げる。最終的には地域の地場産業を革新していけるようなプレーヤーを育てる活動を現在も行っています。

具体的な支援の内容については事例と共にアーカイブにてご紹介しています。地域の方々との併走方法や、我々が主体となった事業など、ぜひこれまでの取り組みや成果をご覧ください。

地域と共創する事業を生み出すためには、①ビジョンを創ること②事業を創ること③組織を創ることの3つのエッセンスが必要です。

①ビジョンを創る

まずは、その事業は何のために行うのか?その目的を明確にすることです。既に自社のパーパス・理念などが明確な企業は多いですが、新しい事業を行う際、会社の存在意義と事業の繋がりについて、納得感を持って当事者は語れるでしょうか?

特に共創の場に深く入り込むほど「なぜこの事業をあなたの会社が行うのか?」という純粋な疑問を受ける時があります。その問いに明確に答えることが出来ない人とは地域の方も一緒に取り組まないでしょう。当事者が「私の会社はこういうことを信じていて、だから取り組んでいます。」と明言できるかどうかは大きなポイントとなってきます。

さらに「私」を主語に共創に取り組む意義を語れるかも重要となってきます。地方共創は役割を越境しなければならない場面が多数あります。会社の看板が意味をなさないことが多く、「会社としてもこういうことを信じているし、私もそう思っている。」と言えるビジョンを持つことが大切です。

②事業を創る

新規事業を既存事業のKPIに当てはめ、売上や効率を考えた時、この活動は簡単に終わってしまうでしょう。そうならないため、事業を創る上で「課題」・「リソース」・「協業」の要素が必要だと考えています。

地域の課題を探そうとした際、地域に住む当事者は課題をそれほど抱えておらず、むしろ都市より豊かに見えてしまうことがあります。地域の方が現状抱えている課題や悩みを解消するという発想ではなく、地域の人たちと私たちの「ありたい未来の姿」を想像し、現状とどうかけ離れているのか。そのギャップを見つけることが「課題設定」のステップです。

さらに、事業を形にしていく上で、リソースを集める必要があります。会社のリソース以上に「個人のリソース」を積極的に使う姿勢が大切です。同じ会社の仲間同士だけ議論しても新規性の高いアイディアに結びつかないことが多いのですが、別の会社の方たちと意見交換をすることで、それらのアイディアと自分たちの事業とを結びつけて考え、実現できる事業の範囲や座組や内容が広がっていきます。

協業モデルの作り方については、本セミナーでは詳しくご紹介しません。しかし、官民連携での協業モデルを実現する事業プロデュースの方法論を学ぶiCHiアカデミーを2023年5月より開講いたしますので、ご興味のある方はぜひご参加ください。具体的な事業の立ち上げ方、財源の確保の方法を学びたい方にオススメの講座になっています。

③組織を創る

せっかくビジョンを創り、新しい事業が立ち上がりそうになっても、その芽を組織の文化が潰してしまうということがよくあります。共創できる事業をスタートさせ、持続可能な活動にしていくためにはまず「組織文化」を見直す必要があると考えています。

これらの組織文化について「経営層」「ミドルマネジメント」「現場」という3つの立場に分けて考えていきます。組織を創る上で、仕組みや、ルール、評価制度よりも、まず文化から考える理由は、これら評価制度などは後から最適な設計を考えることができるからです。理想の評価の形は会社ごとに違います。既存のあるべき姿やオペレーションに合わせることよりも前に「自社にとっての最適」を探すことが組織を創る上では大切だと言えるでしょう。

既存事業での行動様式

既存事業と新規事業、それぞれに必要な素養は圧倒的に違います。既存事業の運営に関わる行動様式を整理し、新規事業ではその行動・態度をどのように変化させていくべきかをご紹介します。詳細はアーカイブにてご覧いただけますので、ぜひ新規事業で必要な経営者の役割と行動様式についてチェックしてみてください。

まずは既存事業では経営者は「徹底した管理とコストカット」「オペレーションの改善・改良」「データ分析と理論的分解」「リスクマネジメント」「意思決定」このようなキーワードが出てくるのではないでしょうか。大きな企業になればなるほど、この傾向は強くなるように感じます。

そして、ミドルマネジメントの大きな役割は担当管理事業の管理とリスクマネジメント。

既存事業では「計画遂行・オペレーション」「生産性の改善・効率化・PDCA」「ロジカル思考と判断」「コストカットと利益の最大化」「失敗の最小化」このようなことを求められているのではないでしょうか。既存事業であれば、これらを徹底することで価値が生まれてくるからです。

特にこのミドルマネジメントの方が新規事業の芽を潰してしまいがちです。既存のデータや結果ではなく、理解できない価値観を理解できないまま受け入れられるか。その行動態度が現場で活動する人たちに大きく影響してきます。

現場の人たちにとって既存事業ではミッションの達成が大きな役割となり、そのために「精密な計画とその実行」「指示される 明確な役割とミッション」「問題・課題の論理的分解と解決方法の実行」「データドリブン」「失敗への恐怖・成功への期待」が求められています。

既存の事業でこれらのことを求められていますが、すべての人にとって「間違えない未来」を探すのではなく、「こうありたい未来」を描くことができるかが大きなポイントとなっていきます。これまでは指示の完遂が求められていましたが自分の意志を持って動くことが何より重要なのです。

組織の意識変革が起こる順番

組織の意識変革は「熱い誰が行動を起こす」ことから始まります。実践する集団の意識変化が起きたら、小さな成果をみんなで祝うというステップに進みましょう。上から評価するのではなく、一緒に喜び、楽しむこと。それらの行動が、現場の人たちに「会社が求めていること」を理解してもらうことに繋がります。マジョリティが行動を縛るのではなく、後押しできる形に変化することで組織文化は新しく生まれていくのです。

熱い思いを持っている人が動ける環境を作り、外に出て情報に沢山触れ、その情報を社内に持ち込むこと。「優秀な人」ではなく「元気な人」を動かす。このような変革を起こすことができる組織こそ、持続可能な事業を創ることができるのです。