LOCAL CRAFT JAPAN ~工芸ツーリズムを起点に、「日本の地域のクラフト」を未来へと手渡す | ミテモ株式会社

LOCAL CRAFT JAPAN ~工芸ツーリズムを起点に、「日本の地域のクラフト」を未来へと手渡す

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実施概要

事業名

LOCAL CRAFT JAPAN

実施内容

  • 全国5つの地域(2022年12月時点) での持続可能な産地観光メニューの造成支援と産地間の連携促進
  • 各地のクラフトツーリズムチームの組成とノウハウの提供
  • 産地のストーリーを伝えるためのwebサイト、動画、オンラインツール、VR技術などのデジタルを活用した支援
  • SNSやマーケティング支援、PRイベントの実施

実施背景

LOCAL CRAFT JAPANは日本全国の伝統工芸の商品開発・販路開拓を支援するミテモ株式会社と、日本全国の伝統工芸をプロデュースするトランクデザイン株式会社が運営を行い、日本の産地にある魅力あるクラフトや、その土地の暮らしを体験できる「クラフトツーリズム」の企画・発信していくプロジェクトです。産地観光を起点に新たな循環を生み出し、日本の地域クラフトを未来へ手渡すことをミッションに、地域を横断した地域共創 基盤を構築し、産地経営の高度化・高付加価値化の実現を目指します。

産地観光をとりまく各地の状況として、そもそも産地観光のメニュー開発に取り組んでいる地域は僅かであり、メニューの造成や受け入れるための基盤も未構築であることが多い状況です。また、先行している地域においても、産地ごと(あるいはトラベル・デザイナーのみ)に産地開発におけるノウハウが埋没し、各産地のキープレーヤーが孤軍奮闘状態に陥っています。

一方で昨今の観光市場を見てみると、2024年世界観光客は14億人に回復し(2019年比96%)、消費額は2019年比で105%に回復するなど追い風傾向にあります。そして観光客の特徴としては、ミレニアム世代を中心に「文化、起源、遺産、スタイル、独自性、本物、質」などを求めるModern Luxury層が増加。さらに、パンデミックを受けて「持続可能性」への意識も高まっているという傾向があります。これらの状況を受け、持続可能な観光メニュー造成に産地が取り組むことには、新たな経済・社会の循環を生み出していけるポテンシャルがあると考えています。

ミテモ株式会社では、これまで自社事業や行政団体の委託事業を通して、地域の伝統工芸・伝統産業関連事業者の工房を訪問し、各職人の技術、ものづくりに対する哲学や人生観、地域に伝承される歴史や文化に至るまで詳細にヒアリングしながら、国内外に販路を拡大するための商品開発~販売支援を伴走型でサポートしてきました。

より緊急性の高い課題である「伝統産業産品の販売数の減少」や「職人の高齢化」、「新型コロナウイルス拡大による既存商流の停止、大型の展示会や見本市の中止」に取り組むために、2020年5月にはオンライン・マーケット・イベント(Local Craft Market)を開催。また、世界最大の職人紹介ポータルサイトであるMeisterstrasseとタイアップし、欧州を中心にオンライン・クラフト・ショーも実施しました。

LOCAL CRAFT JAPANではオンライン・マーケット・イベントを含むこれまでの活動を推進していく中で繋がりを得た全国5つの地域でメニュー造成を行いました。さらにオンライン・マーケット・イベントで得たデジタル体験のナレッジを活用したメニュー開発にも挑戦しています。本プロジェクトを通じて地域が主体となりながら、従来の観光にとらわれないこれからの時代の豊かさを分け合う、そんな持続可能な未来を創造して参ります。

具体的な取り組み

1.「工芸産地をめぐる旅」メニュー造成

本プロジェクトは、単発の観光メニュー開発業務ではなく、地域横断かつ産地参画型で産地観光開発を推進できる体制を構築することから始まり、中核チーム・ノウハウ・ネットワークを産地に蓄積することを目指しています。

そのための実施スキームとして以下のステップで現在も進行中です。

1.各地のクラフトツーリズムチームの組成、ノウハウ提供
2.メニュー造成支援と産地間連携の促進
3.ストーリーテリング、ブランディング
4.SNSなどマーケティングPRイベント(オンライン/リアル)
5.CRM/MA基盤構築デジタルコミュニケーション※詳細は準備中
6.送客&フィードバック

作り手以外も巻き込むチームづくり

今回のツアー造成に関わった5つの地域の職人さんたちは発信モチベーションを強く、また、ツアー造成に関わる作り手の方も意欲的な方が多くいる地域でした。しかし、どれだけ作り手に観光メニュー造成の意識があっても、彼らだけで観光のメニュー開発や受入基盤を整えることは不可能です。そのため、産地のコーディネーター、DMO、観光協会、サポーターが参画し継続していけるようなチーム作りを行いました。

さらにトラベルデザイナーや受入基盤構築/サステナブル・ツーリズムの専門家を誘致し、勉強会や産地合同のミーティングを通じて、産地のリサーチや資源の洗い出しを行います。産地観光の共創プラットフォームを形成するために、以下の運営体制の元、各地で中核を担うコーディネーター、プロデューサーとともに連携を行っています。

運営主体:LOCAL CRAFT JAPAN実行委員会
コラボレーションパートナー:代表企業 ミテモ株式会社/トランクデザイン株式会社/ Eighty Days株式会社/株式会社ジェイノベーションズ/株式会社MATCHA

産地のストーリーを伝えるコンセプトづくり

チーム体制が整った後、地域の方々を中心としながらコンテンツ開発に進みます。ファーストステップとして訪日外国人向け高付加価値旅行を手掛ける専門人材のサポートを受けて「コンセプトシート」を作っていただきました。このコンセプト設計の段階から、地域外の方からフィードバックをもらうことで、その地域らしさが損なわれていないかを確認しながら進めていきます。

例えば、訪日外国人から需要のあるコンテンツから発想してしまうと地域の固有性を失ったツアーになります。一方で地域の伝統工芸の素晴らしさだけを伝えるプロダクトアウトな発想で造成してもニーズが無い場合が多くあります。このようなことを発生しないよう、地域のクラフト を「地域固有性を未来に受け継ぐもの」「人の手だからこそ生み出されているもの」「現在も暮らしとともに存在するもの」と定義づけコンセプトやストーリーを紡いでいきます。

ツアー造成の成果

本プロジェクトでは「旅」を以下のように定義しています。

  • オリジン(起源)をめぐること
  • ローカルで人と出会い、対話しながら時間を過ごすこと
  • 過去と未来をつなぐ、今日という一日を深く味わうこと

これらを踏まえ、全国5地域のメニュー造成を行いました。ものづくりの現場をありのまま感じていただけるように、「日帰りプラン」と「宿泊プラン」の2つの旅のプランを用意し、現在もプロジェクトを進行しています

ツアー造成を行った地域(2021年時点)

①新潟県佐渡市

起点となる伝統工芸品/文化:無名異焼
旅のストーリー:小さな島の中に、400年前からアジア諸国の人と文化が金山へと集まった佐渡島。 国連が認めた世界農業遺産の棚田や130年続く窯元「国三窯」を巡りながら、日本の縮図といわれるほど多様性に富んだ豊かな自然や食、文化を体験していただきます。

②長野県塩尻市

起点となる伝統工芸品/文化:木曽漆器
旅のストーリーや体験:日本の深い山々に囲まれた谷間で400年前から漆器を作り続けた街、木曽平沢。需要の減少により工房が減っていく中、漆と向き合いながら伝統を守り続ける職人、革新を続ける職人に出会い、宿場町 奈良井宿の風景と食を楽しんでいただきます。

③京都府宇治市

起点となる伝統工芸品/文化:おりん
旅のストーリーや体験:日本で広く信仰される仏教の教えに基づき、先祖への礼を伝える際に用いる仏具「おりん」をつくる工程を見学し、寺院で修行僧の体験をしながら日本の仏教に触れてZENの文化と京都 宇治地域を深く体験していただきます。

④奈良県吉野(御所市・吉野町・川上村)

起点となる伝統工芸品/文化:吉野杉
旅のストーリーや体験:世界最古の木造建造物 法隆寺と同じ日本独自の伝統構法で、木材にこだわり、300年を超える長寿命住宅を設計する建築士 木造建築東風 の佐藤氏、岡本氏の案内のもと、吉野の山とともに生きる山守、大工、木工職人の匠達の現場を巡ります。

⑤広島県備後(福山市・尾道市)

起点となる伝統工芸品/文化:デニム
旅のストーリーや体験:国内最大の繊維産地でデニムを糸から織る人、ジーンズを穿いて育てる人、役目を終えて廃棄されたデニム製品から、新しいプロダクトをつくる人。デニムを通して繊維産業の新しい可能性をつくる人々に出会いながら、せとうちの美しい自然と食を体験していただきます。

2.デジタル技術を活用したブランディング

産地のツアー造成と受入基盤構築の一貫として、webサイトやオンラインイベントを介したToC/ToB(エージェント)に対するプロモーションやイベントを実施し、これらのイベント内では、職人の触覚を共有するVR技術およびアバター技術を導入しました。

触覚VR/パプティック技術とはモノの手触りや振動といった触覚を、デジタル信号に変換して共有する技術のことです。例えば通常では体験できない、ものづくり現場の職人の繊細な手触りを、装置を介して追体験することができます。
※触覚VR技術については、名古屋工業大学触覚学研究室の支援を受け実装を進めました。

デジタル技術を活用した具体的な事例

①エージェント向けオンライン商談会
②To C向けオンラインイベント
これらのイベントではZoomや、ガイド機能としてアバター技術を活用しながら、工房での制作行程のデモンストレーション、職人によるプレゼンテーションや質疑応答を行いました。
③オンラインワークショップ(パプティックを含む)
パプティックでは、奈良県吉野の紹介として、職人が吉野杉を伐採する際に感じる振動を、VR技術を活用して参加者にも感じていだくワークショップを開催しました。

デジタル技術を活用したコンテンツ開発の成果

デジタルを活用することは、新型コロナパンデミックによる顧客との接点減少の課題に応えることができただけでなく、地域のストーリーを感じていただくための「タビマエ」の機会を創出することに繋がりました。

例えば、オンラインイベントやワークショップに参加された方からは「職人さんや作り手さんに会いに行きたくなった」「自分も制作体験をしに行きたい」「現地の雰囲気を味わいたい」などの声があがり、ワークショップ参加者の中では総計87.8%の人に現地への訪問意欲があることが分かりました。また、訪問を検討できない人も「コロナが不安である」や「言語の壁を感じる」など、プログラム内容に起因するものでは無い課題によるものでした。

遠隔地にいる人へ日本のクラフトマンの手触りを伝える試みは、その地域に訪れる前からツアーの魅力を高め、産地への親しみを生み出しました。さらに、デジタル技術を活用し遠隔地にいる方と双方的なコミュニケーションが生まれたことによって産地側のモチベーション向上にも繋がりました。オンライン技術を活用したコンテンツ開発がクラフトツーリズムや日本の文化、地域の魅力を発信する新たな手法の確立につながったと実感しています。