総務は創夢する ~SDGsカードゲームから総務を見透す~ | ミテモ株式会社

総務は創夢する ~SDGsカードゲームから総務を見透す~

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イベントがはじまるまで

2019年10月18日(金)に、「創夢コミュニティ〜総務で繋がる、創夢を作る〜」の第4回目のイベントが開催されました。ミテモも協賛として、この記事を通して、イベントの様子や価値や意義をお伝えいたします。そして、創夢コミュニティに興味があったり、コミュニティを求めている全国の総務の方々にその魅力をお届けできればと思います。

雨足が早まる中、茅場町にある内田洋行本社オフィス地下1階のスペースにおよそ30名以上の方々が一堂に会しました。集まっているのは「総務」の方々。ある参加者の表現を借りれば「その働きに対して、陽の目を浴びない部署」の人々。イベントが始まる前特有のピンッとした緩やかな緊張感が漂います。各々、仕事をしながら、名刺を交換しながら、辺りを見渡しながら、開始時刻を待ちます。

「創夢」に込めた思い

開始時刻となり、イベントを進行するミテモの佐藤彰がイベントの趣旨やこれまでの経歴を話しながら、参加者の緊張を解いていきます。彼が「創夢コミュニティ」の発起人です。かつて自分自身も総務担当であった佐藤は「人事コミュニティは数多くあり、交流イベントも毎日のように開かれているのに総務コミュニティもイベントもない」と疑問に思い、このコミュニティを立ち上げました。そして、「総務」ではなく「創夢」としたのは、ゲイリー・ハミルにおける能力ピラミッドの「情熱」(仕事を社会をより良い方向に変えるための手段として捉える)になぞらえて説明します。つまり、ただ目の前の仕事に奔走するのではなく、より良い社会というビジョンを見据えてその手段として仕事に取り組むという総務の価値を「創夢」として表現しているようです。

これまで3回のイベントを経て、改めて「総務の価値とは何か?」を各々が言語化することの重要性に気づいたと佐藤は述べ、「総務の価値を言語化する」というのを本イベントのテーマとして掲げました。参加者の中には、これまで3回のイベントに出席してきた人もいれば、初めての参加の人も半数ほどいました。これから何が始まるのかと思った矢先、佐藤は参加者にこう告げました。

カードゲームから総務の価値を考える・・・!?

「じゃあ1回今の「総務の価値を言語化する」というテーマは忘れてください!」と意気揚々に佐藤が述べるとその唐突さに会場からは笑みがこぼれました。今回のイベントでは、まずゲームを体験した後に、そこでの体験を総務の価値と対話的に紐づけていくという形を取るため、まずはゲームを思い切り楽しむことが結果的により良い「総務の価値の言語化」へと効いてくるそうです。

多少の動揺を見せながらも、参加者はゲームのルールを聞きます。SDGsカードゲームです。「SDGs」とは「Sustainable Development Goals」(持続可能な開発目標)の略称であり、2015年9月に国連サミットで採択された「2030年の世界に向けた持続可能な開発のための国際目標」を指します。貧困や都市に関わることだけでなく、教育やイノベーションに関わる目標も掲げられており、現代に生きる私たちにとって誰もに関わる内容となっています。

ゲームでは「2030年の世界を作る」ことがミッションとして掲げられます。2人1組のペアを組み、各ペアは配られた達成目標カードを事業を通じて達成することが求められます。持っている資源の使い道や事業の進め方などは自由な交渉に委ねられます。ペア間相互の同意の下であれば、ゲームの進め方に基本的に制約はありません。各ペアが事業を進めていくと、その内容に応じてゲーム内世界の「経済」「社会」「自然」指数に変動が生じるという仕組みになっています。さて、ゲームを進めるにつれて世界はどうなっていくのでしょうか?

前半戦の世界(〜2025年頃)

「それでは前半戦スタートです!」と、ゲームの前半戦が始まりました。すると堰を切ったようにほとんどのペアが事業をつぎつぎと進めていきます。中には様子を見ているペアもあり、戦略は様々。そうして大きな熱量のもと、各ペアは事業を進め、各々の目標を達成することに奔走。開始7分と経たずうちに、世界は「経済」指数だけが異様に高くなりました。一方で「社会」・「自然」指数は0となりました。前半戦で作られた世界は「経済は絶好調だが、不平等や差別が横行し、子どもたちは生きるために銃を持ち、動物の大半が絶滅危惧種な状態」となりました。この前半戦で目標を達成したペアはすでに14ペア中6ペアでした。目標が達成されているのに、なぜこんな世界になってしまったのでしょうか?

後半戦の世界(〜2030年)

「これが私たちの生きていきたい世界でしょうか?」と佐藤が問いかけながら後半戦がスタートしました。会場の雰囲気が“成長”を第一とした前半戦とは異なり、後半では世界のバランスを取るための適度な緊張感が生まれていました。参加者はしきりに世界の状況を確認し、頭をかいたりしながらどの事業を進めていくかについて慎重に選択をしています。「社会」の指数が好転すると「おお!社会が伸びてる!」といった喜びの声が漏れ聞こえてきます。中には目標をすでに達成しているので余った資源を別のペアに譲るという“社会貢献活動”をするペアもいました。

こうして、2030年までを20分程度で駆け抜け、SDGsカードゲームは幕を閉じた。本イベントに集まった人で作った2030年の世界は、経済は絶好調、社会・自然には一部課題はあるものの、SDGsの到達度は94%まで実現できました。

カードゲームによってあらわになる現実

さて、このカードゲームの中で起きていたことは私たちの日常生活とは無関係なのでしょうか?という問いが提示されました。参加者は広げられた模造紙を使ってテーブルごとにゲームを通じて感じたことや、起きていたこと、学んだことを書き込んでいきます。中には思わず立ち上がるほどに熱が入るテーブルもありました。以下に振り返りから聞こえてきた内容を記載します。

SDGsカードゲームの中身について

「世界のバランスとか最初は建前くらいにしか思ってなかったけど中間発表を聞いてビックリした」

「最初にそもそも目標ってなんだっけ?というのをシェアした方がよかった」

ゲームの中で起きていたことと現実世界との関連性

「会社の中でも同じようなことが起きている」

「社内コミュニケーションツールだけでなくいかに物理的距離を縮めるかを考えてもいいかも」

佐藤はSDGsカードゲームでは自分たちが無意識的に踏まえている風土や環境によって、バイアスや固定観念が世界の状況を左右することを語ります。営利企業なのか、NPO法人なのかという組織形態によっても「経済」指数が伸びるか「社会」指数が伸びるのかに差が生じるし、ヨーロッパ圏で行うのかアジア圏なのかという地理的・文化的環境によっても作りやすい世界の状況は異なることが見える化されるそうです。

総務の価値の言語化へ

「カードゲームの世界で起きていることは現実世界でも起きている可能性が高い」と佐藤は語り、このカードゲームで起きたことを元に、総務が組織に対して果たすことのできる役割や、総務がいることによる価値とは何かをテーブルメンバーと共に言葉にしていきます。すると、参加者は口々に日々の想いが悲喜こもごも、言葉となって会場を飛び回りました。「契約書ができてない!」「承認フローがめちゃくちゃ!」「常にせわしない」「時間がない!」「時間があると大体お金がない!」「対価を十分にもらっていない!」こういった言葉がぶつかり合って、参加者それぞれの総務としての価値が形作られていきます。組織の全体最適を探ることができる「取引所的存在」と定義する人もいれば、組織全体が目標を達成できているのかをチェックする「俯瞰的視点」と価値づける人もいました。

情熱としての「創夢」

総務の価値を考える際にはSDGsのように、私たちの目標は何か?という視点を持ち続けることの重要性を佐藤は指摘しました。そして最後に佐藤が自身の総務の価値を言語化し、本イベントは明日への高揚感と共に終了しました。

“組織のみんながワクワクするような解像度の高い情景を描くことができる立場が、総務なんじゃないでしょうか。”

参加者インタビュー

動画配信業 Iさん

――参加されたきっかけはなんですか?

動画配信業 Iさん:きっかけとしては上司に「おもしろいコミュニティがあるから来てみない?」と誘ってもらったのがきっかけです。また、「総務の価値を言語化する」というテーマにも惹かれました。
総務はお金を生み出す部署ではないので、あまり注目されないし、そもそも総務がしていることって認知されていないと感じています。なので、どうモチベーションを保っていけばよいのか戸惑う時もあります。総務が日ごろから頑張っているんだということもみんなに知ってほしいし、みんなの期待にも答えたいというところと今回のテーマに共通するものを感じて参加しました。

――イベントに参加してみていかがでしたか?

動画配信業 Iさん:これだ!っていう確固としたのはまだなんとも言えないです。刺激は受けたが、それを言語化するにはまだ到達してなくて、まとまった意見を述べるにはまだ時間がかかるというのが率直な感想です。
ですが、印象に残っているのは、「総務がすぐにアクションできることは広報をすることだ。」というお話でした。もちろん普段のタスクをこなすことは重要ですが、一方で自分たちがやったことを社内にPRしていかないと、総務が組織に対してできる貢献を知ってもらえないというご指摘は共感しました。

――総務の価値はなんだと思いますか?

動画配信業 Iさん:コネクションを持っている点だと思います。例えば、精算方法で悩んでいる人が総務に来て、「経理の人を知らないから誰に相談したらいいか分からない」という相談をされた時に、その人に対して経理の人をつなぐことができます。経理と総務は日頃から面識もあるので、スムーズに対応を依頼することができます。
そういった意味で、総務は組織を俯瞰できる立ち位置にいるんだと思います。俯瞰できるからこそ、組織の交流を活性化することもできる立場なんだと思います。

総務とは、「組織を俯瞰して、活性化するポテンシャルを秘めている」というご意見をいただきました。Iさんがおっしゃるような、もっと組織に対して貢献をしたいという意識を持っている方々にとって、こうしたコミュニケーションが生まれること、共有できる仲間がいる場所があるというのは重要であると思いました。
Iさん、ありがとうございました!

製造業 Hさん

――参加されたきっかけはなんですか?

製造業 Hさん:総務という部署はどちらかと言うと会社の内向きの仕事だから横のつながりが弱いと日頃から考えているからです。私は元々技術者だったので、学会などで横のつながりはたくさんあったので、総務になっても「もっと外に出ようよ」ということで外に出ようと思いました。そうして外から刺激をもらって新たな刺激を内部に届けたいと考えています。こういった場では共有が何よりの刺激になるので、漠然とした話ではなく日ごろ抱えている愚痴を発散したいし、各々が工夫していることを共有したいし、知りたいんですよね。
たとえすぐに活きなくても、何かの拍子にここで学んだことが業務に活きてくると思っているので、参加してます。

――イベントに参加してみていかがでしたか?

製造業 Hさん:ゲームは楽しかったけども時間が短かったので深くまで考えられてないのが正直なところですが、1つ思うところは、「総務がどこまで考える総務か」によって学習内容は異なるだろうなということです。「総務」という名前が何を意味しているのか曖昧だから、どこまで考えることを要求されているのかを把握することが重要だなと感じています。SDGsに沿って考えるなら、環境保護のことも考える総務もいれば企業によってはそうじゃない総務もいるんですよね。だから、「自分はどこまで考える総務であるのか」をまずは考えることが重要なんじゃないかと思いました。

――総務の価値はなんだと思いますか?

製造業 Hさん:シンプルに言えば、「縁の下の力持ち」ですね。つまり、経営に近いところで貢献できるポテンシャルを秘めているというのは大きな価値なんじゃないかと思います。この点には経営層が総務の価値をどう捉えているかによって変わってくるので思うようにはいかないんですけどね。そのためには総務から広報することが必要だなと思います。

総務とは「経営に近しいところで組織に貢献できる縁の下の力持ち」であるとの言葉をいただきました。総務における「内向き性」と「外向き性」についてのご指摘は非常に重要な点だと思いました。自組織と常日頃から向き合っている総務の方だからこそ、外に出た時にどのような要素が自組織に貢献できるのかを見極めるセンサーは精密なのかもしれないなと思いました。
Hさん、ありがとうございました!

おわりに

「情熱」というワードがあったように、金曜日の夜という時間帯にもかかわらず、大きな熱量と深い内省が起きたイベントだったように思います。1人でも多くの総務の人が、こういったイベントを通じて「創夢する」場所が求められているのかもしれないと改めて思いました。ご参加された皆様、ありがとうございました!よい「創夢」を!